ワールドカップ 2020.06.24
ラグビーW杯が日本にもたらしたもの 経済効果分析&大会成果分析レポート

ラグビーW杯が日本にもたらしたもの 経済効果分析&大会成果分析レポート

ノーサイド。試合後、一緒に肩を組んで観客にあいさつするアイルランドとサモアの選手(Photo: Getty Images)

RWC2019で感じた魅力や価値

「RWC2019の魅力や価値を感じたエピソードは何か」を尋ねたアンケートでは、回答者のおよそ9割が「日本代表の躍進と決勝トーナメント進出」と回答し、コアファン・非コアファン共通で最も多い回答となった。そのほか、「さまざまなルーツを持つ選手たちが一体となった日本代表の“ONE TEAM”に魅力を感じた」「南アフリカ代表がイングランド代表を下し優勝」「カナダ代表の釜石での復旧ボランティア」「ニュージーランド代表オールブラックスのハカと対抗するイングランド代表」という回答が多かった。

RWC2019のにわかファンはどのような人々だったか

RWC2019の盛り上がりの立役者とも言える存在であった「にわかファン」は決して一様でなく、スポーツ観戦歴や観戦動機が異なるさまざまな人々で構成されていたことがわかった。他のスポーツ競技では、すでにファン層が固定化されていることが多い中、それまでラグビーをほとんど見たことがなかった多くの人々にラグビーに触れる機会をもたらしたことはRWC2019の大きな成果と言える。

例えば、普段から好んでスポーツ観戦をしていた「スポーツ愛好型」は、今大会でラグビーの魅力を見い出したことによって、今後もラグビー観戦を続けていくと考えられる。また、「ソーシャル交流型」はファンゾーンや飲食店でRWC2019を共通の話題としてコミュニケーションを楽しんだ人々だが、こうした新しいスポーツとの関わり方が生まれたことも、今大会の成果のひとつと言うことができそうだ。

しかしながら、今大会の「にわかファン現象」における最も大きな成果は、コアファンにも比肩する長い時間を観戦に費やし、SNSを活用して熱気を拡散した「ワールドカップ堪能型」のような人々を生み出したことではないだろうか。ラグビーのルールや歴史を知らなくても、臆することなく新しい世界に飛び込み、今大会を存分に楽しんだ彼らは、RWC2019ブームの中心となって盛り上がりを牽引した。彼ら「ワールドカップ堪能型」の観戦満足度の高さ、そして今後のラグビー観戦意欲の高さは、このタイプの非コアファンが今後コアなラグビーファンへと成長していく可能性を示していると考えることができるのではないだろうか。

大会主催者であるワールドラグビーのビル・ボーモント会長はRWC2019を振り返り、「ラグビーに新たな観客をもたらした非常に画期的な大会」と述べた。趣味や娯楽が多様化し、コミュニティの細分化が進む昨今において、日本中に共通の話題をもたらし、多様な人々に「一生に一度」の祭典を享受する機会を与えたRWC2019は、他に類を見ない特別な大会であったと言えるだろう。今大会を機に、国内において今後ますますスポーツを楽しむ文化が広がり、根付いていくことが期待される。

日本全国での温かいおもてなしが選手や訪日客を笑顔にした。幼稚園児とハイタッチする豪代表スコット・シオ(Photo: Getty Images)

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