コラム 2025.06.13
【コラム】リーグワン2024-25余話

【コラム】リーグワン2024-25余話

[ 明石尚之 ]

◾️変わらぬ地元愛。

 その試合で喜びを噛み締めたのは、スカイアクティブズの大竹智也。右PRで先発した。

「素直に嬉しいですね。これまであまりタイトルを獲るという経験はしてこなかったので」

 広島工、天理大を卒業後、地元チームへの加入を決めた。
 2016年に入団した32歳だ。

 広島では高校時代にも”タイトル”を残している。「天理に行く前に」と、地元の飲食店をまわって「お好み焼き5玉」「ラーメン替え玉15回」の大食い記録を作った。

「お店に写真が飾ってあります」

 加入当時、マツダはトップキュウシュウ所属。トップリーグのチームからも声をかけられながら帰郷することを選んでいた。

「周りからは上に行って欲しいと言われましたが、やっぱり地元が好きだったのでしょう。いまも後悔はありません」

「めちゃくちゃ大都会でもなく、大田舎でもない。ちょうどいい」広島が好きだ。

「ケガが多かったので、プロは厳しいというのもありました。マツダと中国電力さんを見ていて、どちらかにはいきたいなと。自分から声をかけさせていただいた。仕事も100%でやらせてもらっているので、すごく充実しています」

 大竹の加入以降、母校の天理大からは続々と後輩たちが加入する。
 ともに最前列でスクラムを組んだPR加藤滉紫をはじめ8人の天理大OBが在籍している。うち半分がPRだ。

「後輩が来てくれるのは嬉しいですね。ムードメーカーはたいてい天理。新人の選手が来たら、金丸(勇人)選手が歓迎の舞をします」

 スカイアクティブズはリーグワン初年度にD3降格を味わってから、2年連続の4位と成績は振るわなかった。
 今季のチームの成長に、就任1年目のダミアン・カラウナHCの存在を挙げた。男子セブンズ日本代表HC、宗像サニックスブルースHCを務めたこともある。

「みんなが誰かのために動くようになりました。バンバン(愛称)はファミリーであることを一番大事にします。これまでよりも仲良いですし、前向きになりました」

 上手くいかないと人を変えることで解決しようとしていたチームは、「何がいけなかったかをちゃんと深掘りするようになりました」。例えばスクラムでは、映像を見ながら改善点を指摘し合えるようになった。

「いまは自分が何をすべきか、役割が明確です」

 日本製鉄釜石シーウェイブスとの入替戦は、2戦2敗に終わった。
 来季こそ、の思いは強い。

 最後に。ブラックラムズのCTB、池田悠希の小ネタを。
 グラウンドでは頼りになる男も(今季全18試合に先発出場)、その場を離れれば天然キャラを爆発させる。

 昨季の代表活動中に、SNSでのプロモーション用に撮影された中楠一期との対談では、トリートメントを流し忘れてテカテカの髪のまま後輩の家に向かう「抜けてる」エピソードを披露。今シーズンに起こった”事件”も聞いてみた。

「ブルーレヴズとの試合は前泊だったのですが、移動はスーツなのに帰りにスラックスをホテルに置き忘れてしまって…。短パンで帰りました(笑)。ジャケットに短パンはまずいと思って、半袖短パンで。気温が高めでよかったです。(チームの反応は…)池田がまたやったかくらいの感じでした」

 来シーズンも、いい話が聞けますように。

【筆者プロフィール】明石尚之( あかし ひさゆき )
1997年生まれ、神奈川県出身。筑波大学新聞で筑波大学ラグビー部の取材を担当。2020年4月にベースボール・マガジン社に入社し、ラグビーマガジン編集部に配属。リーグワン、関西大学リーグ、高校、世代別代表(高校、U20)、女子日本代表を中心に精力的に取材している。

PICK UP