国内 2024.12.31

【連載】プロクラブのすすめ㉑ 山谷拓志社長[静岡ブルーレヴズ] なりたい姿から逆算できるリーグへ。

[ 明石尚之 ]
【連載】プロクラブのすすめ㉑ 山谷拓志社長[静岡ブルーレヴズ] なりたい姿から逆算できるリーグへ。
(撮影:松村真行)

 日本ラグビー界初のプロクラブとしてスタートを切った、静岡ブルーレヴズの運営面、経営面の仕掛け、ひいてはリーグワンについて、山谷拓志社長に解説してもらう連載企画。

 21回目となる今回は、先日リーグワンが発表した「今後の方向性」について山谷社長の見解を語ってもらった(12月6日)。

◆過去の連載記事はこちら

――まずはリーグからの今回の発表をどう受け止めていますか。

(フェーズ3の)2028-29シーズンから、試合数をホスト&ビジターフォーマットの最低試合数である22試合まで増やすことを明確に示したのは高く評価できます。
 加えて、代表活動と被るなどいろいろなことが懸念されていた中で、開幕が秋からになるのも大きな進歩。シーズンの期間が長くなればメディア露出の機会も増えるし、バイウィークが増えれば選手のコンディションも整えやすくなります。

 スタジアムではライセンスとして明確に基準を定めたことも大きいです。

 一方で、リーグが今後どうあるべきかという議論が少し足りなかったと感じます。リーグの未来を描くことから逆算する、いわゆるバックキャスティングの発想がなかった。

 リーグの会議では何度も発言してきましたが、クラブの法人化はリーグのビジョンに照らし合わせると一丁目一番地です。ただ、母体企業の許可が下りなかったり、そもそも分社化したくないという意見があり、なかなかそこに踏み込めていないのが現状です。

――東海林一専務理事は、現時点では「いまの形が望ましい」と会見で発言していました。

 そこは僕と大きな意見の違いです。(企業スポーツと法人化したプロクラブが混在する)いまの形が致し方ないとしても、望ましいとは決して思いません。

 リーグの理念である「あなたの街から、世界最高をつくろう」を実現するためには、クラブが法人化をして、”あなたの街”であるホストタウンを明確にして、その地域に根差して経済活動する状況が一番望ましいはず。ラグビーだけが特別ということはないんです。

――なかなかそうした深い議論ができないのはなぜでしょうか。

 追い求めすぎると、ついていけないクラブが出てきたり、大胆なことを掲げて反対されることを避けているんだと思います。自分も他競技でリーグの責任者を務めた経験があるのでその気持は理解できます。

 ただ、法人化することがライセンスで義務付けられたことで母体企業がクラブを支援しなくなることは、バスケでもサッカーでもまったく起きてないわけです。
 それに、法人化するとクラブの経営が安定せず最悪存続できなくなるという意見も耳にしますが、実際に過去の事例をみるとクラブが存続できなくなったり、規模を縮小することになってしまったのはすべて企業スポーツなんです。

 法人化しているクラブは、JリーグやBリーグでも経営危機には陥ってもオーナーチェンジや資本の注入などで存続することがほとんどで、中にはヴィッセル神戸や千葉ジェッツのようにその後見事に成功した事例もあります。
 自分もつくばロボッツ(現・茨城ロボッツ)が経営危機に陥っていた時に社長になりましたが、その後新たな株主が見つかり立て直すことができました。それは自分が頑張ったということではなく、株式がある法人であり社長という全責任を負った立場の者がいたからこそ成し遂げられたことだと思っています。

――ただ、ラグビークラブはサッカーやバスケに比べて、運営費が高額です。支援に手を挙げる企業は現れるのでしょうか。

 クラブの将来性が見えたり、リーグが発展していくという希望を持つことができたり、売上や企業価値を高めるチャンスがあるという期待感が出てくれば、興味を示したり先行投資する企業も当然出てくると思います。本来、ラグビーはそれくらい魅力的なコンテンツであるはずです。

 なので1社で20億円程度の予算を拠出していただける母体企業があるうちに、はやく法人化した方が絶対に良いです。
 自分の経験則ですが、そもそも価値があると証明されているプロスポーツにおいては、やることをしっかりやれば集客や売上は時間と比例して確実に伸びていきます。できるだけ早く始めることが有利になる性質のビジネスなんです。僕が言うのはおこがましいですが、ブルーレヴズはその点では先行者利益を享受できるアドバンテージのある状況だと思っています。

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