国内 2024.12.31
【連載】プロクラブのすすめ㉑ 山谷拓志社長[静岡ブルーレヴズ] なりたい姿から逆算できるリーグへ。

【連載】プロクラブのすすめ㉑ 山谷拓志社長[静岡ブルーレヴズ] なりたい姿から逆算できるリーグへ。

[ 明石尚之 ]

――全チームがプロクラブとなれば、首都圏の一極集中も解消されるかもしれません。

 企業の本社や工場がある場所が拠点であるというのは企業スポーツの発想なんです。その考え方が決して悪いことではありません。

 ただ、いざ商売するとなれば、どこを拠点に構えて、どういった商圏でやるのがいいのか、どこのエリアであればスタジアムを確保しやすくなるのかなどといった発想になるはずです。

 ラグビーのプロクラブを誘致したい自治体はたくさんあるはずです。清宮(克幸)さんの「新プロリーグ構想」にもあったように、W杯の開催地は特に可能性が高いです。ラグビーの魅力やラグビーの力を知っているわけですから。

 トップリーグの時代のようにクラブが興行権をもたないリーグであれば、日本全国いろいろな場所でホストゲームをおこなうことがラグビーの普及になると考えることは理解できます。
 一方で興行権をクラブが持つリーグでは、集客やコスト、マーケティングなどの効率を考えても1か所でやる方がベスト。いまのリーグワンにおいてはそのようなクラブを各地に生み出していくことがラグビーの普及になるんです。それが本来の姿だと思います。

 ホストゲームで集客するためには単にチケットを売ればいいだけではありません。いろいろな場所にポスターを貼ったり、地元のメディアに出演したり、選手がイベントに出たり、ラグビー体験会をやったりと、365日ホストエリアの中でいろいろなことをやって地元の人たちが愛着を持って接してくれる。
 そんな状況が積み重なったうえでようやくそれらの繋がりが生まれて少しずつ成果がでていくもの。複数のエリアでそのような活動をしてしまうと、リソースが分散してしまうのであまりにも非効率です。

――第2フェーズでは、リーグは母体企業のサポート比率をD1平均60%以内とすることを目指しています。

 最初は50%という話だったのですが、60%になったんですね。母体企業からの支援金額はそのままでその比率を減らすためには、他の売上の増加が必須です。ただこれは、試合数が増えなければ物理的に難しいことなんです。

 ブルーレヴズでは現時点で全売上の3分の2程度をヤマハ発動機にサポートしていただいている状況ですが、試合数が22試合になり10月開幕となる2028-29シーズンにはその支援比率を50%程度にはしたいと考えています。

――サラリーキャップも2027-28シーズンから導入予定です。

 かなり踏み込んだと感じます。サラリーキャップは法人化よりも実現しにくい制度だと思っています。

 選手会とも会話をしながら進めていかないといけないですし、サラリーキャップ制度を導入するなら抜け道がないようにきちんと管理監査をする必要もありますから。リーグとしては手間やコストもかかることなんですけど、それをリーグがしっかりと意志を持って進めることは良い方向性だと思いました。

――来季の秋には「若手育成リーグ」が開催予定です。

 こちらはリーグからアイデアとして示されていますが、具体的な話はこれからです。
 何を目的に据えるのか、どういうルールでやるのか、ホスト&ビジターでやるのか、賞金を出すのか、順位をつけるのかなど、これから詰めていかなければいけません。

 若手を育てることが一番の目的ですが、それだけだとこれまでの練習試合と何も変わりません。これまでもチーム間同士で試合を組み、Bチーム戦のような形で若手中心の試合も組んできましたから。
 当然コストはかかりますし、クラブにとっては若手を育てること以外のモチベーションがないといけません。スタジアムのことを考えれば、はやく動かなければいけないと思います。

 ただ、その時期(秋)にスタジアムが確保できるんだとしたら、レギュラーシーズンもできるはずなので、はやくホスト&ビジターフォーマット(22試合)を実現していただきたいですね。



PROFILE
やまや・たかし
1970年6月24日生まれ。東京都出身。日本選手権(ラグビー)で慶大がトヨタ自動車を破る試合を見て慶應高に進学も、アメフトを始める。慶大経済学部卒業後、リクルート入社(シーガルズ入部)。’07年にリンクスポーツエンターテイメント(宇都宮ブレックス運営会社)の代表取締役に就任。’13年にJBL専務理事を務め、’14年には経営難だった茨城ロボッツ・スポーツエンターテイメント(茨城ロボッツ運営会社)の代表取締役社長に就任。再建を託され、’21年にB1リーグ昇格を達成。同年7月、静岡ブルーレヴズ株式会社代表取締役社長に就任

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