【再録・解体心書③】楽天家で行動派。長田智希
*ラグビーマガジンの人気コーナー『解体心書』にかつて掲載された、ワールドカップ2023日本代表メンバーのインタビューを抜粋して再録。(掲載内容はすべて当時のまま)
長田智希[早稲田大学] *2019年10月号掲載
同じく年代代表に選ばれ主将を務めてきた福井翔大(パナソニック)が言う。「あいつが本当のキャプテン。『おっさん』がいてくれたから、自分でもなんとか務まった」。スパイクを脱げば素顔は、のんびりとした優しい『おっさん』。オフの穏やかさは、オンのたぐいまれな勤勉さと対をなしている。(文/成見宏樹、写真/髙塩隆)
あらゆる年代代表に選出され、実績を残すエリートである。
バランスの取れたプレーの術を持ちながら、ミッドフィールドで誰よりも体を張り、メンタルたくましく周囲を引っ張り、勝負を制していく。
2019年7月21日、ブラジルはサンジョゼ。また一つ、うれしいメダルを胸にした。U20日本代表として、U20トロフィーを制す。ポルトガルとの決勝は、わずか1点差の勝利だった。
選手たちの間で重要な役割を果たしたリーダーの一人に、長田がいる。
福井翔大主将は「頼りにしている」と公言、プレーの説得力だけではなく、穏やかで素直な人柄は、いつも人の輪の中にあった。あだ名は、「おっさん」。まだ十代。踏んだ舞台は数多くエピソードは尽きないが、ここは、大学シーズン直前に味わったサンジョゼの「美酒」の話から。
「僕らが予想していたよりも、ポルトガルはずっと、フィジカルが強いと感じました。FWがスクラムで踏ん張ってくれたから何とかなりました。やっぱりセット、特にスクラムが強いって、しやすいなあって思いました。ポルトガルに対してもっと準備もしたかったですけど、今回は直前にメンバーが変わったりで、選手としては一戦、一戦、目の前のことだけ考えて戦っていました。
大会が始まった時には、まだチームは完成していなかった。戦いながら、サインができるようになったり…。正直、ずっと準備してきた僕らからすれば『サインくらい覚えてきて』と感じてしまうのですが、そこは、突然招集された選手も、たいへんやったと思います。こちらも伝えきれてないところがある。だから、まず、思ってることはしっかり言おう、伝え方は考えよう、と。もとからいる奴らからフォローしていこうって話は、しました。
うれしかったのは、ケニア戦ですかね。ポルトガル戦(優勝決定戦)の前だったので、リザーブ中心の先発だったんですが、このメンバーが、それまでみんなでやろう、と言ってたことを試合で体現してくれた。ディフェンスでも、タックル数がみんな多かったんです。
U20は、去年のチャンピオンシップも選んでいただいて(出場なし)いたので、責任というか、次の年代に繋がないといけないという気持ちはありました。来年の選手には、今度はチャンピオンシップでは勝ってほしい。少し、ほっとしています」
ラグビーの最終目標は、という質問には日本代表と答えた。これほど赤白のジャージーを着た人でも、やはりフル代表には憧れるものなのか。