コラム
2020.08.27
【コラム】大きな可能性と、まだ、小さな声。
とはいえ、ここに集まっていたのは日本各地に散る十代の運動部員。コーチングが体系化された強豪校で主力を張る選手はそう多くはなく、それぞれの置かれた環境や教育的背景は千差万別だ。テーマに沿った議論を短時間でまとめるなんて「(若いうちは)できない方が普通」だと、野澤さんも認める。
そもそも、意見を求められて口ごもったり、考え込んだりする選手自体は、決して悪ではない。上手に話のできる選手にも、「指導者などの意を一定の枠組みに沿ってまとめ、仲間の本音と異なる意思決定を下してしまいかねない」という危険性がはらむ。こう考えると、無口であることが排除の理由とならない組織の方が健全でもありそうだ。
昨季限りで現役を退いた佐々木隆道は、この夏から国内トップリーグのキヤノンでフォワードコーチを務める。
選手時代に日本代表入りなど豊富な経験を積んできた青年指導者は、BFキャンプのミッションに「全然、間違っていない」と共鳴したうえで、「(話せないことが)だめ、ってことじゃない」ともフォローする。能弁な選手の抱えるリスクも、把握していた。
「(その選手が)どういうマインドでそれ(ミーティングなどでの言葉)を話しているかが大事。『こう言っておけばいいんでしょ』では、(意味が)ないんです」
さらに指摘するのは、「ディスカッションができる子たちは、普段から考え、物事を決める癖がついている」という点だ。