コラム 2020.08.27
【コラム】大きな可能性と、まだ、小さな声。

【コラム】大きな可能性と、まだ、小さな声。

[ 向 風見也 ]
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 例えば元日本代表の菊谷崇さんらが2018年から運営するブリングアップのラグビーアカデミーでは、ジュニア世代のラグビーマンたちがゲーム形式のセッションを実施。指導陣が選手同士の自主的な対話を見守るなか、仲間同士で問題を解決する力を養う。いわば、子どものうちに自分の哲学、心理を言葉へ変える「癖」をつけている。

 一方で今度の80名には、積極的に意思決定に関わった経験の少ない青年もいただろう。大人しさは思慮深さ、我慢強さに昇華されうる。改めて、喋るのが苦手なことは決して悪いことではない。

 十代の頃から強いリーダーシップを発揮していた佐々木も、現時点でやや寡黙な十代の若者をこう勇気づける。

「『きょう、喋れなかったな』『本当はこんなことを考えていたのにな』『明日は勇気を持って喋ってみよう』と、思うことが大事。何がブレーキの原因なのかを自分でわかって、乗り越えるのって、すごく大切ですよ」

 そうだ。2日目のセッションで、今田は「目標設定は振り返りとセット」だと伝えていた。

「トーマス・エジソンは、『1万通りのうまくいかない方法を見つけただけだ』と言っています。電気を発明する前に1万回も失敗していますが、その時にうまくいかない方法を発見している、と。経験したことをどう認識するかで、それは失敗じゃなく学びになる」

 今回、能弁だった選手も、そうでなかった選手も、「周りの意見にとらわれない等身大の思いを端的にまとめる楽しさ」を理解し、自分の言動を「振り返」る習慣をつけていれば、スター選手になるための第一関門はクリアしているのかもしれない。

向 風見也
【筆者プロフィール】向 風見也( むかい ふみや )
1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年よりスポーツライターとなり、主にラグビーに関するリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「スポルティーバ」「スポーツナビ」「ラグビーリパブリック」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)。『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(共著/双葉社)。『サンウルブズの挑戦』(双葉社)。

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