コラム
2019.12.22
【コラム】鍛錬は細部に宿る。
地力がなければ勝負の舞台には上がれない。それがラグビーだと思う。激しいコリジョンに耐えうる肉体、それを試合終了まで維持し続ける体力は、闘争の前提だ。どれほどスピーディーでスキルフルでタクティカルなチームであっても、タックルおよびその後のボール争奪の局面である程度対抗できなければ沈黙を強いられる。「フィジカルが強くなると、ラグビーの悩みの7割はなくなる」。かつて東福岡高校の藤田雄一郎監督から聞いたひと言は、競技の核心を突く至言として脳裏に刻まれている。
そして、だからこそというべきか、最上級の地力を備えた者同士が対峙する極限の戦いでは、細かい部分のプレーの精度や意識、いわゆる細部のこだわりが、勝敗を決する。つくづくそう感じる。
先のラグビーワールドカップ2019日本大会において、勇敢かつ爽快な戦いぶりで世界中の目利きを感嘆させたジャパンの戦士たちが口々に発していたのが、『ディテール』というキーワードだった。ディテール=細部、細部への留意。目を凝らさなければ見逃してしまうような細かいところでの細やかな心配りが、あらゆるプレーに徹底されている。その成果は絶大だった。
象徴はスクラムだ。日本が誇るマイスター、長谷川慎コーチの指導によって築き上げられた『ジャパンのスクラム』は、世界トップクラスの強豪国に対しても、善戦にとどまらずむしろ武器となった。なぜか。体格とパワーの差を覆すための緻密なシステムがあったからだ。フットポジションからプッシュの同調、8人のベクトルの束ね方…。わずかな力も漏らさぬためのチェック項目は、膨大な数に上ったという。