コラム
2019.12.22
【コラム】鍛錬は細部に宿る。
さらに、ボールキャリーの際は胸ではなく必ずハンズキャッチでパスを受け、ギリギリまで両手で球を持つ(すぐに抱え込まない)ことも徹底されていた。常に両サイドにパスオプションがあるため、相手ディフェンダーは周囲の選手を見切って的を絞ることができず、結果としてキャリアーは優位な状況でヒットできる。そうしたディテールの積み重ねこそが、相手の強みを封じつつ自分たちの強みを発揮する『ジャパンのラグビー』の真髄だった。
日本中を沸かせた祭典の閉幕からちょうどひと月が経った、12月1日の秩父宮ラグビー場。2万3千の大観衆がスタンドを埋めた明治大学と早稲田大学の伝統の一戦にも、『ディテール』の重要性を見た。
25年ぶりの全勝対決を36-7の快勝で制したこの日の明治のパフォーマンス、ことにアタックのクオリティは、際立っていた。密集サイドで突破を図るFWの選手が、必ず走り込みながらフラットな位置でパスを受ける。その徹底した姿勢は、ワールドカップの準決勝であのオールブラックスに何もさせず完勝したイングランドのアタックを彷彿させた。
ラグビーではルール上、密集からボールが出るまで相手ディフェンダーはオフサイドラインを越えることができない。スピードに乗ってほぼ並行にパスを受けるアタッカーと、ボールアウトを確認してから前に出るディフェンダーの出足の勢いを比べれば、前者に分があるのは明白だ。そうやって一つひとつのフェーズでわずかでもゲインを重ね続ければ、相手は常に戻りながら守らなければならなくなり、最終的に我慢しきれなくなる。「プレーの主導権は攻撃側にある」というラグビーの原理原則にのっとったアタックは、実に効果的だった。