【コラム】アウェーで見たいタフさ
2019年のワールドカップ日本大会をきっかけにラグビーを見始めたファンにとって、自分たちの国が大敗した最初の試合になったのではないか。
2021年に約1年8か月ぶりに活動を再開させた日本代表が、同年11月6日、ダブリンのアビバスタジアムでアイルランド代表に5―60と大敗した。
日本大会時の直接対決では19―12と敗れたアイルランド代表だが、今回はスタンドオフでこの日100キャップのジョナサン・セクストンら、当時出ていなかった名手を並べる。防御の死角を切り裂き、空中戦とその後の攻防でも競り勝った。
かたや日本代表は、攻めてもタックラーに的を絞られミスや反則を重ねる。大差がついて向こうのクオリティが乱れるまで、防戦一方に映った。
2023年のフランス大会で前回以上の成績を目指すチームにとって、道のりの険しさを再認識できた80分。敵地でおこなわれた一戦としても価値があった。
「サインプレーが、ほとんどばれたんですよね。(情報漏洩には)本当に気をつけてやったんですけど、完全に丸裸にされていたので…。意表を突くプレーも作っていかないとああいう(強い)相手には勝てないですが、それをどのように落とし込んでいくかがこれからの課題だと思っています」
藤井雄一郎ナショナルチームディレクターが回想したのは、直近までの欧州遠征を終えた7月6日。6月26日のブリティッシュ&アイリッシュ(B&I)・ライオンズ戦前の準備状況について話した時だ。チームはそのツアーで、B&I・ライオンズ、アイルランド代表に10―28、31―39と連敗していた。
B&I・ライオンズ戦前、最初に指定された練習場にはゴールポストすらなかった。選手の証言によれば、ジェイミー・ジョセフヘッドコーチもこの様子に怒り心頭だったようだ。
通常のラグビー用施設へ場所を変更できた後も、「洗礼」と取れる状況は変わらない。
会場であるエディンバラはマレーフィールドが天然芝と人工芝のハイブリットであるのに対し、練習場のそれは天然芝だった。加えて、いざ当日になってみれば藤井は「サインがばれとった」と直感。敵地での情報管理の難しさを痛感したようだ。
試合前と試合時の芝が違う状況は、7月3日のアイルランド代表戦時も続いた。