コラム 2021.03.25
【コラム】「大丈夫」は危ない。退く勇気も仲間のため。

【コラム】「大丈夫」は危ない。退く勇気も仲間のため。

[ 谷口 誠 ]
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 今、脳震盪に対していいかげんな対応は許されなくなっている。脳に与えるダメージの深刻さや、何年も後に後遺症が出るケースも明らかになってきた。昨年、元イングランド代表のスティーブ・トンプソンさんら9人が国際統括団体ワールドラグビーなどに対して提訴の意思を明かしたことは大きなニュースにもなった。

 ワールドラグビーも安全対策には力を入れている。頭や首などを危険にさらすプレーへの取り締まりを年々厳格化。2019年のワールドカップで脳震盪の数は減ったと強調する。今月には、危険なプレーとして処罰する範囲を広げる措置を発表。ボール保持者が肘で守備側の頭を打った場合などが対象に加わった。

 日本のトップリーグでも今月、神戸製鋼のNO8ナエアタ ルイら3選手が頭や首への危険なプレーで4週間の出場停止になった。重すぎると感じる人もいるかもしれないが、世界的な流れの中ではやむを得ない判断だろう。

 脳震盪が大きな問題となっているのはラグビーだけではない。米アメリカンフットボールNFLも選手や家族らから相次いで訴訟を起こされている。サッカーでもヘディングによる後遺症が懸念されている。

 スポーツ界で頭のケガへの対処が遅れたのは、「見つけにくさ」が一因だろう。脳震盪では、痛みや出血などのサインが小さいことも珍しくない。おまけに、できるだけ長い間、フィールドに立っていたいという願望は選手の本能でもある。特に自らの意思で試合から離脱することをチームへの裏切りと感じる人もいる。だから周囲が脳震盪に気付かないまま、本人が無理をして試合に出場するという事態が起きてしまう。

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