コラム 2021.03.25

【コラム】「大丈夫」は危ない。退く勇気も仲間のため。

[ 谷口 誠 ]
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【コラム】「大丈夫」は危ない。退く勇気も仲間のため。
試合中の心理や認知は時に「非日常」なものになる(Photo/Getty Images)

 家のベッドで寝たのに、目が覚めたら学校のグラウンドに横たわっている。周りではジャージーを着た仲間が走っている。今はラグビーの試合中らしい。慌てて立ち上がり、走り出した…。

◆シックスネーションズのひとコマ。仲間と指導者と、本当の信頼関係があれば、いったん退くこともできる

 高校2年の時、初めて脳振とうになった。誇張ではなく、夢の中にいるような感覚だった。数時間分の記憶が消えていたのだろう。見慣れたグラウンドにいるけど、どういう状況かまったく分からない。

「これは練習試合?」「相手はどこ?」「今のスコアは?」。試合が止まる度、近くの味方から情報を集め、プレーを続けた。

 母校が安全への配慮を欠いていたというわけではないだろう。倒れていたのは恐らく一瞬で、ベンチは気付かなかった。何より、20年以上前のラグビー界は脳振盪への危機感が今より格段に薄かった。頭を強打して意識がもうろうとしても、立ち上がってタックルに行く姿はむしろ美談だった。

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