コラム 2021.03.12

【ラグリパWest】部員0、部の危機、OB会も立つ。 大阪府立八尾高校

[ 鎮 勝也 ]
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【ラグリパWest】部員0、部の危機、OB会も立つ。 大阪府立八尾高校
八尾高校のラグビー部員獲得にまい進する3人。中山高広OB会会長、中出智之監督、東部泰昌OB会幹事長(左から)。東部幹事長が持っているのはOB会自慢の年誌。後ろのユーカリは初代校長が植え、学校のシンボルとなっている

 ラグビーを始めてくれる高校生のために、必要なものを用意します。
 ——それは?
「ジャージー、短パン、ストッキング、スパイク、それにヘッドギアですね」
 中山高広は約束する。八尾高校のラグビー部OB会の会長である。読みは「やお」。会は「かわちのラガー」と呼ばれている。500人を超える組織である。

 チームに大事が出来(しゅったい)する。
 昨秋、100回記念大会の大阪府予選後に5人いた部員が0になった。布施など13校で組む「G」は、近大附に7—80で敗れる。その直後、唯一の2年生が退部した。
 グッズの無料は今年93年目を迎える部を維持するためである。

「また、15人が八尾のジャージーを着ているところを見せてほしいと思っています」
 65歳の中山は緑×白の段柄の復活を望む。普段は数社の顧問をつとめている。

 八尾のラグビー部は府内の高校で3番目の歴史を誇る。旧制中学時代の1928年(昭和3)に創部。その6年前に天王寺が、それに1年遅れて北野が部を作っている。

 八尾に楕円球が伝わった翌1929年、隣の東大阪に当時、東洋一と言われた花園ラグビー場が完成する。今は「ライナーズ」と呼ばれる近鉄がこの年を創部に定める。社会人のトップチームよりその産声は早い。

 この地の旧国名は河内。八尾市は「河内音頭」発祥の地だ。お祭りで、「えんやこらせー、どっこいせ」の音曲が流れる。そのにぎやかで激しい地域に格闘的な球技はマッチする。

 3年前には90周年の式典を催した。その年の全国大会予選は19人。翌年から15人を割る。監督の中出智之は視線を落とす。
「僕は細かいところまできっちり教えたい性格でした。でもそれが…」
 勝つことを楽しさより優先してはいなかったか、高校生の自主性を引き出せたか、49歳の指導者の胸には様々な思いが去来する。

 中出は富田林(とんだばやし)から京都教育大に進んだ。現役時代はバックロー。保健・体育教員となり、2013年に赴任した。この4月で9年目。府下のラグビーを運営する大阪高体連では強化委員長をつとめている。

 八尾に来た当初、中出は少人数だった部をすぐに単独に戻した。この学校を大会の会場校にして、裏方となる運営役も買って出る。敷地は大阪の府立高校では堺にある鳳(おおとり)に次ぎ2番目に広く、土ながらフルサイズのグラウンドがとれる。

 自分なりに力は尽くしてきたつもりだったが、部員は0になる。
 すぐに中学回りを始める。市内の中学にはラグビー部がないため、東大阪の弥刀(みと)、上小阪、小阪などを訪ねた。

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