フランスラグビー徒然。Novembre(11月)
今年1月にスタートした「ガルチエ・ブルー物語 シーズン1」。最終回第5話をようやく見ることができた。
コロナウイルスの影響で中断されていたシックスネーションズは、10月31日に最終節が行われ、ファビアン・ガルチエ監督率いるフランスが35—27で勝利。総勝ち点でイングランドと並んだが、得失点差で優勝を逃した。
コロナだけではなく、代表選手のリリースを巡って協会とリーグとの対立もあり、実現されるかどうか、ギリギリまでハラハラさせられた。
通常、秋のテストマッチのための代表選手のリリース期間は4試合と規定されているが、夏のテストマッチが中止になったことを考慮して、リーグ側は5試合まで譲歩。だがフランス協会はワールドラグビーの後ろ盾を得て、リーグの承諾なしに6試合行うと発表した。
一時は選手をリリースしないと言い出すクラブチームもあったが、最終的に「準備合宿には42人の選手が必要」というガルチエのこだわりを31人に変更、1人の選手がマッチシートに登録されるのは最大3試合までという条件付きでリーグも同意、両者間で協定が交わされた。代表合宿が始まるわずか3日前のことだった。
ウィンドウマンスもリーグ戦が続くフランス。特にトゥールーズのように多くの代表選手を輩出しているチームにとっては、切実な問題だ。事実、11月1日のスタッドフランセ戦では、ケガ人もあり9人の新人を起用。結果は14−48で敗戦と、厳しい現実に直面している。
前回のエディンバラを舞台にした第4話から237日間、待ちに待った最終回をレ・ブルーは優勝で飾ることは叶わなかったが、アイルランドに危なげなく勝ち、シーズン2への期待が高まる。
試合後のインタビューで、アイルランド主将のジョナサン・セクストンから「試合前から、このフランスチームは、どこからでもトライを奪ってくるとわかっていた。まるでオールブラックスと対戦するようなもの」と賛辞を贈られた。
選手たちは試合終了直後は優勝を逃して落胆していたものの、しばらくして円陣を組んだときにはすでに笑顔だった。
円陣の中でキャプテンのシャルル・オリボンが話す。
「やっとみんな笑ったな。この笑顔を忘れないでおこう。これは大会の終わりじゃない。物語の始まりだ。滅多に経験できることじゃない。しっかり噛みしめて心に刻みつけよう」
しばらく全員でグラウンドに残り、飛び跳ねながら歌う姿は、微笑ましくもあり、頼もしくもある。
しかし、彼らの背景に映るのは、フィクションのように空っぽのスタッド・ド・フランスのスタンド。本来なら、歓喜する8万人のサポーターで大いに盛り上がったはずだった。