各国代表 2020.11.08
フランスラグビー徒然。Novembre(11月)

フランスラグビー徒然。Novembre(11月)

[ 福本美由紀 ]


 そんな中、ラグビーだけが4.7%増加しているのが興味深い。フランスのラグビーの競技人口は、2012年以降減少傾向にあった。フランス代表チームの成績が振るわなかった時期である。
 ここ数年、フランス協会が競技人口の増加に力を入れてきた。さらに今年2月の6ネーションズでの代表チームの活躍を見て、デュポンやンタマックに憧れてラグビーを始めた子どもも、少なくはないだろう。アイルランド戦のテレビ中継はフランス国内で22.4%の高視聴率を記録し、560万人がテレビを通して代表選手の背中を後押ししていた。

 そのフランス代表ジャージーの背番号には、国内のアマチュアチームの名前がプリントされていた。番号の下には、それぞれの選手の出身チーム、自分を育ててくれたチーム名が書かれている。
「この状況でラグビーができるのは、とても恵まれている。(ロックダウンで)プレーできなくなってしまった、すべてのアマチュアプレーヤーや、子どもたちへの使命を感じている。試合を見て少しでも楽しんでもらえたなら、我々も嬉しい」と、試合後にガルチエは言った。

 若い才能とエネルギーに溢れ、打たれ強く勇敢に戦い、全員が同じ方向を向き、仲間のためにプレーをする。何よりも生き生きとプレーしている彼らを見るのはワクワクする。
 フランスのファンがずっと見たかったフランス代表の姿である。ロックダウンやテロで重い空気のフランスのラグビーファンを励まし、勇気づけている。

「ガルチエ・ブルー物語」が今年1月にスタートした時、この物語の筋書きとして、「勝つ、タイトルを獲得する、世界ランキング3位に入る、離れてしまったファンの心を再び取り戻す」などが挙げられていた。
 近年なかなか勝てていなかったイングランド、ウエールズ、アイルランドに勝った。タイトルはまだ獲得できていないが、ファンの心はしっかり掴んだ。来月予定されているワールドカップの抽選会までにランキングを4位に上げ、2023への筋書きが着々と実現されている。

「これは物語の始まりでしかない」とガルチエは言う。「続きも楽しみにしてくれ」と言わんばかりだ。
 ただ、この物語が2023年に大ハッピーエンドで完結するためには、「TOP14 ウィズコロナ」の危機を無事に乗り越え、再び、楽隊の音楽が鳴り響くトップ14のスタジアムがサポーターで埋め尽くされる——そんな景色で最終回を迎えることが必要不可欠である。



PICK UP