コラム
2020.09.03
【コラム】原点は、「その前」の3年間に。
W杯日本大会開幕から、もうすぐ1年。
列島では多くの少年少女がラグビーを始めた。
うれしいことだが、そんな子どもたちの受け皿となっているラグビースクールのある新米コーチから悩みを聞いた。W杯の影響でラグビーボールに触れたことのない、これまでスポーツをしたことない子どもがスクールに入ってくれた。一方でチームには、パスやキックが自在にできる子どももいる。できれば、その子たちを一緒に練習させたい。どうやって教えればいいのだろうか?
東京都世田谷区立千歳中学校を訪ねた。ラグビー部監督の長島章さんに話を聞くためだ。都内の二つの公立中ラグビー部を率いて24年。千歳中では11年連続で関東大会出場、昨年は私立の強豪校を倒して関東制覇という快挙を達成した。ユースレベルで名将と知られるようになった今でこそ、経験者がこぞって越境入学するようになってはいる。それでも、未経験者を育てることは今も変わらぬ楽しみという。そんな長島先生の指導哲学は、悩めるコーチの参考になるかもしれない。
千歳中は練習でA、Bとチーム分けしない。1年生から3年生まで一緒に球を追う。FWバックスの垣根もない。経験者の新入生には、こう諭す。「ラグビーをやっていたからといって、偉そうにしたらだめだよ。今は上でも、将来は分からない。ラグビーではどんなポジションの、どんな人もリスペクトされなきゃいけない。人の楽しさを阻害したらいけないよ」。リオ五輪に出場した豊島翔平(東芝)ら、日本代表のジャージに袖を通した教え子は未経験者ばかり、とも説明するそうだ。