コラム
2020.09.03
【コラム】原点は、「その前」の3年間に。
豊多摩高校、国際武道大学でラグビーをしてきた長島先生。教員としてのキャリアは江戸川区立松江五中で始まった。最初の受け持ちは障害者学級。体育だけでなく、九九を教え、劇も指導した。最初はできないことばかり。対話も満足にいかない。粘り強く伝え続けると少しずつ変わっていった。当時はなかったラダーを自作し、毎日生徒たちに足の運び方を教えた。ある日、ファーストベースまでまっすぐ走れなかった子が、一直線に走れるようになった。49歳になった今でも鮮やかによみがえる思い出だ。
障害者学級を受け持った3年間が、長島先生の原点にある。他の指導者との違いは何かと聞くと、「ラグビーより先生であることを大事にしているところかもしれない。生徒指導や学校行事が何より好きなんです」と笑った。
8月末。千歳中は成城学園中と、約半年ぶりとなる練習試合に臨んだ。カテゴリー別に振り分けた最後のゲーム。はじかれ、つながれ、走られて、50点差をつけられた。なすすべなく敗れ、下を向く教え子たちを集めると、長島先生は唇をかみしめつつ、開口一番、問いかけた。
「みんな、楽しめたか?」
ラグビーを楽しめるようにするのが、コーチの役割なのだ。もちろん、悔しさはある。でも、ファーストへ駆け抜けた教え子の姿に心を震わせた長島先生が伝えたいことは、いつだって変わらない。