コラム 2020.09.03

ラグビー金言【26】ジャージーの色によって自分を変えない。

[ 編集部 ]
ラグビー金言【26】ジャージーの色によって自分を変えない。
事前に情報を得て、状況を把握しているから、見ていないエリアへ効果的なキックを蹴ることができた。(Getty Images)



 オールブラックスとして35キャップを積み重ね(1997年〜2004年)、テストマッチでの通算得点は291。元ニュージーランド代表のカーロス・スペンサーは残した実績も立派だけど、それ以上に、多くのファンの記憶に強烈な印象を刻む選手だった。

 漆黒のジャージーを着て、背番号は10。クリエイティブなプレーで世界を魅了した。
 相手に視線を送ったまま放るノールックパス。あさっての方向を見ながらのキックは、なぜだかいつも、絶妙なところへ落ちた。

 そんな奔放なプレースタイルも、「すべてに根拠があった」という男は、その存在感の大きさから『キング』と呼ばれた。
 現役引退後はコーチとなり、南アフリカのライオンズや宗像サニックスで指導。その後母国に戻り、2019年シーズンから今季途中までハリケーンズのアシスタントコーチを務めていた。

【カーロス・スペンサーの金言】

 ノールックパスは、決して奇をてらったものではなかった。「私がターゲットを見ずにパスを放ることができたのは、事前の情報と信頼関係から。相手を捕まえる(トイメンを引きつける)ために前を見続けていただけです」と話す。
「チームメートとコミュニケーションがとれているかどうか。そこでパスか通るか、有効かどうか決まる。練習時から繰り返してプレーし、よく話し、情報を伝えあって動くから一人ひとりの動きを理解できるようになるし、お互いに考えていることが分かるようになる。だからノールックパスでも仲間はいい位置でそれを受けられるし、違うところを見てキックを蹴ったとしても反応できる。相手は分からなくても、味方は僕がなにをやるか分かっていた。アタックがうまくいくとき、いかないとき、パスの出し手と受ける側、どちらの責任が大きいとかそういうものはない。あくまでチーム全体で動くもの」

 大きなモーションを見せておいて、短く、柔らかなパスを出す。鋭く小さな動きで、長く、速いパスもできた。そんなプレーにファンは喜んだが、すべては勝利のためであり、理にかなっていた。
「オールブラックスはマストウィン。勝利しか求められていません。でも、だからといって私は、自分の(冒険的な)プレーを変えたことはない。なぜなら、それが自分のスタイルであり、いちばん良いところが出るからです。ジャージーの色によって自分を変えることはないし、誰だって、そんなことをする必要はない」

 スペースを見つける天才は、その極意を尋ねられると、「私には6つの目がありますから」と話し、自分のこめかみの上と、右と左の後頭部を指差して言った。
「チームメート(がかけてくれる声)のお陰です」


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