コラム
2020.08.06
【コラム】 あなたがいたから
【キーワード】サンウルブズ
■当時大学4年生で先発出場したSH齋藤直人は、その時間を「なんか、ほんと、すごく楽しくて」と表現した
2016年2月27日の秩父宮ラグビー場の雰囲気をよく覚えている。控えめな期待と恐れにも似た不安、そしてそれらを包む特大の熱気。華々しく装飾された大音量のBGMが鳴り響くスタジアムは、新しいことが始まろうとする圧倒的な高揚感に満ちていた。
最寄り駅から会場へと向かう道すがら、ピカピカのジャージーをまとったファンの会話が聞こえた。
「予想は願望を込めて20対40くらい。せめて30点差くらいの勝負はしてほしいね」
準備の面で大幅に遅れをとったこともあって見立てはシビア。それでも、そう語る声は興奮で弾んでいた。きっと多くの方々が、同じような心境ではなかったかと想像する。
結果は13-26。敗れはしたものの、ひとまずほっと胸をなで下ろすデビュー戦だった。後半18分、ラックサイドをもぐってチーム初トライを挙げたキャプテン堀江翔太の照れたような笑顔が忘れられない。ちなみに対戦相手のライオンズはこの年、南アフリカグループを1位で通過しプレーオフファイナルに進出している。出場メンバーには、SHファフ・デクラークやSOエルトン・ヤンチース、HOマルコム・マークス、LOフランコ・モスタートら、そうそうたる名前が並んでいた。
サンウルブズのスーパーラグビーにおける歩みは、そうやって始まった。