【再録・ジャパン_03】ピーター・ラブスカフニ [2018年9月号/解体心書]
「自分は常に懸命にプレーしてきて、ある時期までは、『ラグビーがすべて』の生活を送っていました。シニアの契約が取れなかったとき、落ち込みました。ただそこで、ラグビーが私のすべてではない、人生には他の道もあるんだと理解した。その時に、神と私の関係は始まったんだと思います。私なりの努力を続けていたら、突然、扉が開いた」
キャリアの先には日本があった。所属のクボタは2016年は12位、2017年は11位。ここでも毎週ベストを尽くしていたが、脚光を浴びたのはやはりサンウルブズでの活躍、3年目に入ってからだった。
ぶれずに積み上げる。戦い続ける。
サンウルブズのものとして語られた美点は、ラピース自身の姿勢に重なる。そして、月日を重ねるうちに、その場所に親しみと敬意が湧くのを感じている。
「日本に来ることを決めたのは、妻と一緒に、新しい環境で質の高い生活を送ろうというイメージでした。1年プレーして、この土地と人々を理解できるようになって、好きになりました。
一番の素晴らしさは勤勉さをすべての人が持っていること。もしかすると、皆さんにとっては取るに足らないことかもしれませんが、どこかが壊れたり、不具合を起こしたとき、翌日になると必ず手当てされている。誰がやってくれたのか分からないが直っている。皆さんの環境がそうさせるのでしょうか、気さくで、僕らのような異邦の人にも愛をもって接している。
人に対する配慮、気遣いが、バスでも電車でも、どこへ行っても感じられる。これは素晴らしい、とても得がたいことだと思います。
するべきこと、超えるべき壁がまだまだありますが、チャンスをもらえるならば、ブレイブ・ブロッサムズのジャージーを着て、この国と人々の代表として戦いたい。そう思うようになりました」
開かれた扉を順に進んでいくと、ワールドカップ開催国の代表ジャージーが視野に入ってきた。
「サッカーのワールドカップで日本が世界を驚かせたのは、ベルギーとの試合だけではありません。整然とした選手たちのロッカールームや、試合後にスタンドのごみを拾うサポーターの姿も。日本は、競技のパフォーマンスだけではなく、そういう資質や影響力を持っている。
日本は敗れてなお、大きな足跡を残しました。あんな出来事を来年、ラグビーでも起こすことができたら素晴らしい」