コラム 2020.04.23

【コラム】ONE TEAM.

[ 向 風見也 ]
【コラム】ONE TEAM.
2019年の新語・流行語大賞に選ばれ、巷のさまざまな場面、コメントで使われた。時の言葉に(写真は2019年の日本代表ジャージー発表会/撮影:松本かおり)

 新型コロナウイルスの感染拡大が世界中のスポーツ興行の動きを大きく鈍らせていた4月17日午後、ラグビー日本代表の主将として昨秋のワールドカップ日本大会で8強入りしたリーチ マイケルが国内メディアのオンライン取材に応じた。

 折しも内閣総理大臣の安倍晋三がオリンピック東京大会の延期が決まったことなどを受けるような形で国民の外出を抑制する緊急事態宣言を発令。東京都知事の小池百合子も「オーバーシュート」なるヴィヴィッドな単語を用いてそれに倣っていた。
 
 リーチへ投げかけられた代表質問も、世相とリンクした。

「多くの困難な状況を一丸となって乗り越えるために『ONE TEAM』という言葉が使われている。その言葉の生みの親としてどう感じているか」

 ナショナルチーム掲げたスローガンの『ONE TEAM』を用いる形で、病と対峙する人類の態度に関するメッセージが求められたわけだ。
 
 この標語は実際には、リーチが代表を辞退していた頃にジェイミー・ジョセフヘッドコーチが多国籍、多文化のチームを結束させるために作成したもの。ただしリーチは、質問内容と事実関係の差異には触れない形で答える。思慮深さがにじんでいながらも簡潔な言い回しは、緊急時にあっても変わらなかった。

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