【コラム】激しさと、今こそ勇気を。
神奈川・桐蔭学園の優勝で幕を閉じた第99回全国高校大会は、7日間で総観客数が12万4千人を超え、55校が出場し、過去最多だった95回の記念大会に次ぐ動員を記録した。後援する毎日放送の動画配信以外にも、スポーツナビなどで無料視聴が可能になり、W杯人気が続く中、多くの人がラグビーにふれるきっかけとなった。改めて、子どもにラグビーを、と思った親御さんもいたのではないか。
だからこそ、指導者が考えるべき最も大事な要素の一つが安全の確保になる。
今大会は決勝までに8件の脳振盪(疑いを含む)が報告された。特にシード校が登場する12月30日の2回戦で6件と集中した。当日の悪天候の影響もあっただろうが、実力差の大きいチームが戦うと、接触の局面でどうしても無理をするケースが出てしまう。
花園には北海道から九州までのべ140人の医師が集まり、1試合につき最大で4人の「マッチデードクター」がけがに備えた。脳振盪と見受けられる選手が出たら、11に及ぶ症状のチェックリストや「今いる試合会場はどこですか」などと質問を重ね、脳振盪かどうかの判定をした。
W杯やテストマッチ、国内ならトップリーグといったエリートレベルの大会では、HIA(ヘッド・インジュリー・アセスメント)と呼ばれる脳振盪のチェックシステムが導入されている。ビデオでの確認や有資格者による判定で、脳振盪を見つけ出すことには優れているが、機器や人員の設置にコストがかかるため、全国大学選手権を含め、学生レベルの大会では適用されていない。
花園などで採用されている「R&R」(リコグナイズ&リムーブ=確認と止めさせる)は、HIAより簡易なシステムだが、ドクターが項目にそって疑わしいと思われる判断した場合、選手がすぐに退場しなければいけない。そのため、「安全性はより担保される」と花園で長年医務委員長を務める外山幸正さんは言う。