コラム
2020.01.10
【コラム】激しさと、今こそ勇気を。
かつては「うちの選手は脳振盪ではない」と主張し、ドクターの判断に抗議する指導者も少なくなかった。自チームの勝利を優先して、チームドクターが脳振盪とみられる症状の選手の出場を継続させたシーンを、私もかつて見たことがある。
しかし、近年は脳振盪の状態のまま、もう一度脳振盪を起こすと危険な症状に陥る可能性が高くなる「セカンド・インパクト・シンドローム」が周知され、花園では「ドクターの判断に文句をいう指導者はいなくなった」と外山さんは話す。
脳振盪になることの多いプレーの一つが、相手の正面に頭が入ってしまう、いわゆる「逆ヘッド」のタックルだ。外山さんらは一昨年、第93~97回大会の5年間分の花園でおきた脳振盪を、傷病録や映像を見返して調査し、発表した。254試合で受傷件数は23件、うち「タックルをして」が18件、「タックルをされて」が4件だった。97回大会では7件の受傷すべてが、タックルの際の頭とひざの衝突や逆ヘッドによるものだったという。
順天堂大学の医師らによる約4千回のタックルの分析では、逆ヘッドで入った場合の負傷の頻度が、肩で当たって頭を上に出す基本のタックルの約25倍に上ったという調査結果も出ている。
この10年間で3度の全国制覇を遂げている大阪・東海大仰星高では、逆ヘッドなどの危険なタックルをしないよう、ボディコントロールの指導を徹底している。単純に「逆ヘッドは危険だからしないように」と言っても抽象的で、選手はどう動けばいいか分からない。