川崎兄弟の入替戦。関東学院大ラグビー部、3年ぶり1部昇格。
ノーサイド直前、リードはわずか3点。途中で味方選手が一時退場処分を受けたため、相手より1人少ないまま自陣で守ることとなった。関東学院大ラグビー部で副将を務める川崎龍清は、心で誓った。
「前に出る時は揃って上がる」
「横の選手と手をつなぐ感覚で並ぶ」
それは試合前に確認した、防御の約束事だった。
2019年12月8日、埼玉・熊谷ラグビー場。関東大学リーグ戦の入替戦である。2部2位の関東学院大は、1部7位の拓大の最後の反撃を受けていた。身長184センチ、体重100キロの4年生LOは、ラインアウトでは相手ボールのスティールを試み、防御網に入ってはロータックルと素早い起立を繰り返した。
関東学院大のベンチには、2年生WTBの川崎清純がいた。龍清の弟だ。身長190センチ、体重100キロという恵まれたサイズとスピード、キック力を誇り、ラグビーを始めたばかりだった高校1年時に7人制の強化機関であるセブンズアカデミーに招集された逸材。大学1年時には同日本代表としてアジアシリーズの香港大会でプレーした。
この日は先発し、自らのハイパントで前半4分の先制トライをお膳立て。後半24分に退き、身体を張る兄たちに最後まで声援を送った。
「勝ってくれると信じ、見守っていました」
ノーサイド。31-28。1997年度から10季連続で大学選手権決勝へ進んだ関東学院大が、3季ぶりの1部昇格である。
兄は、矜持を覗かせた。
「2年間、弟と一緒にできて楽しかったです。僕より弟の方が有名。弟になりたいとは思いませんが、兄貴としてはありたい。一歩、上にいようとは思っています。ひたすらタックルです」
龍清が岩手の盛岡工の土木科へ入ったのは、卒業後すぐに就職するため。高校で始めたラグビーは3年間できっぱり辞めるつもりだった。
卒業までに「計算技術検定、パソコン利用検定、土木施工管理2級」と複数の資格試験をパス。実地経験を積めば工事等の現場監督ができるようになった。進路選択の際も、ラグビー部入りを前提にした大学進学の誘いへは応じなかった。
しかし、関東学院大の勧誘はとにかく熱心だった。そのラブコールを「3回くらい」は断ったという龍清だが、板井良太監督に何度も足を運んでもらうなかで考えを変える。すでに在籍していた1学年上の先輩やカントーのOBである父の同級生に話を聞いたら、雰囲気のよいクラブだとわかった。家族と相談のうえ、単身で神奈川県にあるクラブの寮へ入った。入学した2016年度は、4シーズンぶりに1部昇格したシーズンだった。