【ラグリパWest】近鉄ライナーズ浮上の活性剤。 フランカー・菅原貴人
「僕が思うに、岩出先生は取り組みがよく、賢い選手を使うような気がするんです。だから、菅原が3年から試合に出られた、ということはそういう部分がしっかりしているんだろうなあと考えました」
飯泉の前任は採用。監督の岩出雅之と接する中で、その嗜好を探り、判断材料にする。
菅原はその夏、色よい返事をした。
「僕は関西の人間なので、近鉄というチームや会社は特別な存在感がありました」
学歴の頭に乗るのは常に御所。その後ろに小、中、実とついた。出身の街まで近鉄電車が走っている。
菅原は飯泉の予想通りだった。
「手を抜かない、ということが体に染みついています」
ゴールから22メートルラインまでのダッシュの繰り返しも常に全力。疲れが来ても顔を地面に向けない。上げたままだ。
「帝京では、人として成長させてもらえました。率先してやっていく、だとか、周囲との協力だとかを学びました」
今年1月2日、フランカーで先発した第55回大学選手権準決勝は、7−29で天理大に敗れた。10連覇はならなかったが、生きる上で大切なものを4年間で得る。
卒業後、近鉄グループホールディングスの総合職として入社した。鉄道、百貨店、不動産など日本有数の巨大グループを率いる社長になる可能性を秘める。同期は30人ほどだ。
「五十音順で前は東大、後ろは京大です」
7月中旬に研修が終わると近鉄リテーリングに配属された。ファミリーマートで働く。
京都線と奈良線が合流するターミナル・大和西大寺の構内で接客、レジ打ち、品出し、発注などをこなし、仕事の基本を覚える。
「色々なお客さんが来るので飽きません」
午前中は業務。午後から練習。住まいは東花園にあるラグビー部の一志寮である。
「社会人になったので、次のラグビーのグレードはありません。現役としてできる時間は限られている。だから全力でやります」
競技を始めたのは御所中入学から。楕円球との関りは11年目に入る。
「今年の目標はリーグ優勝です。入替戦がないので、明確な目標はこれですね」
近鉄は結束を固めるため、8月28日から1泊2日で富士山に登った。国内最高3776メートルの初征服を日本一に見立てた。現実にするには、トップリーグへの復帰、そしてそこで勝ち続けなければならない。
道のりは長い。
しかし、若い菅原には、あふれんばかりの未来がある。