海外 2024.04.26

【スーパーラグビー・パシフィック】クルセイダーズ、待望のキャプテン復帰。連敗ストップなるか

[ 松尾智規 ]
【スーパーラグビー・パシフィック】クルセイダーズ、待望のキャプテン復帰。連敗ストップなるか
破壊力抜群のCTBリーヴァイ・アウムア。(Getty Images)


 絶対王者は、どこへ。
 スーパーラグビー・パシフィック第9節(4月19日、20日)を終わった時点で、昨年の覇者のクルセイダーズが最下位。8試合でわずか1勝。なかなか不調から抜け出せないでいる。

 クルセイダーズの初勝利は、第6節、チーフス相手に37-26だった(3月29日)。試合内容が本来のクルセイダーズの強さを取り戻したように見えただけに、誰もが勢いに乗ると思っていた。

 しかし、オーストラリア遠征の初戦ワラターズ戦(第8節/4月12日)は、何度もリードする側が入れ替わった激戦となり、ロスタイムに入りPG(ペナルティーゴール)で追いつかれた。
 その後、ゴールデンポイント(延長戦で先に得点をとったほうが勝ち)では、ドロップゴールを決められ40-43とサヨナラ負け(今季2勝のワラターズの勝ち星は、2度ともクルセイダーズから)。勝ちを逃したと言わざるを得ない試合だった。

 翌週の第9節は、場所をパースに移動してフォースと対戦(4月20日)。試合が始まる前の時点で12チーム中11位のクルセイダーズ、12位のフォース(ともに1勝6敗)で負けた方が最下位になるという試合だった。

 開始早々勢いがあったクルセイダーズが先制トライ。幸先の良い立ち上がりに手応えを感じた。その後も勢いはあったものの、攻撃側のブレイクダウンで厳しく反則をとっていたレフリングの対応に苦戦し反則が多発。その間にフォースに勢いが傾き、ミスが重なった後半に一気に突き放された。結果は、15-37で敗戦した。
 フォースのラインアウからのドライビングモールに全然対応できずに何度かトライを奪われた。チーフス戦で見せたFW陣の泥臭いプレーは、フォース戦では感じることができなかった。

 オーストラリアで連勝して勢いをつけるどころか、ニュージーランド(以下、NZ)国内の大方の予想(期待)とは裏腹に2連敗を喫した。
 優勝14回で現在7連覇中(コロナ渦の2020、2021年のNZ国内のアオテアロアの大会を入れて)の絶対王者が影をひそめている。
 LOサム・ホワイトロック、SOリッチー・モウンガというクルセイダーズのレジェンド2人が抜けた。その影響が大きいことは否めないが、ここまで思わしくない成績とは誰も予想していなかっただろう。チーフス戦で自信を取り戻したように思えたが、再び自信を無くしてしまったかもしれない。

 オーストラリア遠征のメンバーは、FLイーサン・ブラッカダーなどの復帰があり厚みが増したはずだ。ケガ人がまだ完全に戻ってきていないとはいえ、試合に出ているメンバーはNZ代表キャップを持っている選手が何人も入っていた。この結果にNZ国内の報道はざわついた。

 キャプテンを務めているLOスコット・バレットが開幕3節のフィジアン・ドゥルア戦で指を骨折して離脱してから、チームが徐々に悪い流れに行ってしまった様子がうかがえる。
 それに重なるようにCTBデイヴィッド・ハヴィリもシーズン途中でケガをして離脱した。HOコーディー・テイラーも休養からまだ戻ってきていない。リーダーシップをとる選手の不在が大きく影響している。

◆待望のキャプテン、バレットの復帰! ファンはクルセイダーズの復活を待っている。

 第10節、4月26日にクライストチャーチでおこなわれるレベルズ戦のメンバー発表があった。その中には、キャプテンのバレットの名前があった。背番号4、いきなり先発での復帰だ。
 ハヴィリは、ベンチスタートで戻ってくる。CTBだけでなく、SOの位置でのプレーもあるかもしれない。一気に2人のリーダーが戻ってきたことでチームに安心感が出てくるだろうか。

帰ってきたキャプテン、LOスコット・バレット。(撮影/松尾智規)

 試合前日におこなわれるキャプテンズランは、4月25日、Anzac Day(アンザック・デー)の祝日で一般のファンに公開された。これまで苦しいシーズンを送っているだけに、前日からファンの声援を選手に届けるという意味もあったかもしれない。

 たくさんの家族連れが見守る中、選手たちが登場。まずは、遊びの要素を入れながらのウォームアップは、リラックスしていて和やかな雰囲気だった。
 その後FWとBKにわかれて、ひとつひとつのプレーを細かくチェック。そこでは、今季苦戦しているセットピースの、特にラインアウトに一番時間を割いていた。そして最後にスクラムのチェックもしっかりとおこなった。

 今回の相手レベルズは、万年下位に沈んでいるものの今季は5勝3敗で4位につけている。現在3連勝中と勢いにのっている。失点も多いが得点力は非常に高い。ボールを渡すと一気にトライを取る事ができる。それもあり、セットピースを安定させたい思いが強いキャプテンズランだったように思う。
 そして、レベルズは、フィジカルが強い選手も多い。ブレイクダウンを含む接点での攻防でもクルセイダーズは警戒しなければいけない。

 NZ国内は、今季調子を取り戻せていないクルセイダーズの復活を待ち望んでいる。
 クルセイダーズOBは、「プレーオフにはなんとか残れる」と、強気な発言をしているものの、口調は穏やかではないのがヒシヒシと感じる。

 オーストラリア遠征で後味の悪い内容に終わり、2連敗でホームに戻ってきた。報道陣への受け答えに選手たちは顔をしかめる場面が多く見られた。当然ロブ・ペニーHCへの風当たりも強い。
 しかし、地元クライストチャーチでペニーHCのこれまでの貢献度は、大きく買われている。

 それは選手たちも同じ。キャプテンのバレットは、チームの不振で騒がしくなっている事に対して、「この環境の外にいる人たちが、それを見て石を投げるのは簡単なことだと思う。ロブ(ペニーHC)がチームに入ってきました。新しい環境に入ったとき、達成しようとしていることを定着させるには少し時間がかかります」。
 続けて、「チームの苦戦の責任は分かち合わなければならない」と、報道陣に対してペ二ーHCを擁護するような発言をした。

 ペニーHCのキャプテンズランでのファンへの対応、選手との接し方を見ていると、成績不振での苦悩の様子は感じられなかった。同じようにクルセイダーズの選手たちも穏やかな様子だった。
 レベルズ戦に向けて自信を持っている、やってくれる、という雰囲気にもとれた。

 残り6試合中、第9節でハイランダーズに31-0と圧勝(4月19日)したレッズ、そしてブランビーズ、ブルーズの強豪との試合が残っている。これ以上負けると8位以内のチームが出場できるプレーオフは、いよいよ危うくなってくる。

 クルセイダーズが下位に沈んでいるスーパーラグビーは、なんだか居心地がよくない。
 バレット、ハヴィリの復帰。そして破壊力抜群のCTBリーヴァイ・アウムアがここにきてチームにコミットしてきた。いよいよエンジンがかかる時が来たかもしれない。
 クライストチャーチのファンの前でクルセイダーズの復活はあるだろうか。

キャプテンズラン後、ファンサービスをする選手たち。笑顔があふれた。(撮影/松尾智規)


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