国内 2019.07.01
新トップリーグ構想 < 6月17日取材:太田治 新トップリーグチェアマン インタビュー >

新トップリーグ構想 < 6月17日取材:太田治 新トップリーグチェアマン インタビュー >

2022年1月開始は固定。8月下旬にメディア発表へ。地域性を高め、競技力と集客力の高いリーグを目指す

[ 成見宏樹 ]

太田「チーム内の強化の実態は、もうほとんどラグビーに専念できる環境にある。それを、昔のように戻せと言っているわけではありません。企業が、自社の制度の中でプロの選手やスタッフを抱えることを止めているのでもありません」

——プロ化には3つ層があると思います。TLのリーグ運営のプロ化、チーム経営のプロ化、選手とスタッフの個人のプロ化。チェアマンが今触れたのは、個人のプロ化の部分ですね。さらに今後は、TLも法人化して日本協会から独立し(2018年2月に法人格取得)、運営もプロ化していく。ただ、各チームの経営はあくまで独立はせず、企業の中の存在に止まる。(編集部注:TLとしては、『チーム強化部門は現状維持、チーム運営(事業)は企業の制度の中で機能』の方針を各チームへ提示済とのこと)

太田「TLチームは今、これだけのプロ人材を抱え、さらに海外からは魅力的な選手たちが次々と加入してくる場になっています。選手たちの雇用を含めて、チーム強化の実態は、日本独自の特徴的な仕組みだと思います。それを一般的なプロ化に照らして壊す必要はまったくないと思います」

——リーグ全体の運営はプロ。各チームの経営は企業に属する。ここのアンバランスが気がかりです。例えば新TLが10チームになったとします。今のTLチームは、6社が事実上の2部落ちになる。2部になっても現状の投資を続けてくれる会社がどれだけあるでしょうか。チーム関係者にどれだけ熱意と創意があっても、決めるのは会社。結果的に、強化をするチームとしないチームの力の差は大きく開くのではないでしょうか。
 2部扱いになるけれど、ラグビーの強化は今まで通りに続けてもらう、各社をラグビーに引き止めるには、相当な見返りが必要です。何か手はありそうですか。

太田「現段階では、チーム数も決まっていない中で、仮の話はできません。参加チームが決定した段階で、全チームと協議し詳細を決めて行きたいと思います」

満員のスタジアムでリーグの価値向上を

——例えば、カップ戦で日本一を狙えることなどを2部チームへアピールするのは難しいと感じます。サッカーと違って、ラグビーは番狂わせが起きにくい。カップ戦の意義は限られているのでは。まして、この構想では、1部リーグには世界からの選手が集まってしのぎを削ることになります。入れ替え戦の枠を大きくとるなど、1部と2部の流動性を高める策も想定されますが、カップ戦でも入れ替え戦でも、1部側の圧勝が続くのではないでしょうか。2部であってもTLにいたい——各企業がそう思えるだけの魅力を備えるのは本当に難題です。

太田「参加チーム数が決定していない中で、一部・二部などのフォーマットに関する話は現段階では、できません。最終的には徹底した集客施策によって「満員のスタジアム」を実現することで、さまざまな価値を向上させ、収益増加、投資促進を導き出したいと思います。それがファン(競技者増)を生み出し、価値が向上するスパイラルとなる絵を描いています。メディアのみなさんも含めて、いろんな意見やアイデアがあればご教示頂きたい」

——確かに、万能でデメリットのない制度はないと思います。なので、今回のTLの方針は「競争力」と「集客」に特化するという決断だ、と感じました。デメリットはあるが、何かを決めなければ前に進めない。ただ、今回の決断は、参加企業だけではなく、大学や高校でラグビーをする選手も減らすことにならないでしょうか。

太田「TLは、日本代表強化を支える基盤です。TLも自身の価値を上げることを目指して活動しなければなりません。一方で、日本協会とは、代表強化や普及・育成といった観点で連携をしていかなくてはなりません。

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