国内 2025.10.10

166センチでリーグワンへ。早大・田中勇成が抱く大志。

[ 向 風見也 ]
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166センチでリーグワンへ。早大・田中勇成が抱く大志。
早稲田大学FL田中勇成(撮影:長岡洋幸)

 シャットアウトを誇りながら、満足はしなかった。

 早大4年の田中勇成は9月28日、東京・秩父宮ラグビー場での関東大学対抗戦Aの2試合目に先発。立大を78-0で下して開幕2連勝して「意地を見せられた」としながら、局所的にタックルがかわされたり、やや受け身になっていたりしたことを伸びしろに挙げた。

 前年度に守りの仕組みを整えた佐々木隆道アシスタントコーチは、新シーズンを前に国内リーグワン1部のトヨタヴェルブリッツに移った。残された1人である田中勇は、「残されたシステムをやっている。よりコミュニケーションをとるようになって、いまのところうまくいっています」と述べる。

 目指すは2019年度以来17度目の大学日本一だ。在学中の3年間を思い返せば、一部の実力者にあまりに依存してしまったシーズンもあったという。最終学年でリーダーとなったいま、過去の反省を活かして最後の季節を駆け抜けたい。

「(特定の選手の意見だけを)鵜吞みにせず、折り合いをつける。スキルがある人に頼り過ぎる時点で受け身になってしまうし、そういう人に対して(指摘すべきことを)言えていないこと(年度)もあった。そうならないようにする。それが、副将の自分の役割でもあります」

 身長166センチ、体重87キロ。FW第3列を担うトップ選手にあっては小柄である。それでもハードタックルと運動量で、伝統校のファーストジャージィを守る。

 卒業後はリーグワン1部のクラブへ加わる。関係者を通じて練習に混ぜてもらい、その折のパフォーマンスが買われて参戦が叶った。

 強く信じる。海外勢の大量加入で選手の大型化が進む舞台へ、自分のようなサイズに恵まれない選手が挑むことの価値の大きさを。

「小さい頃から(国内トップを)目指していた。大学でこの低さで勝負できるなと感じてから、(現実的に)思い始めました。(空中戦の)ラインアウトであまり貢献できていないな…という思いはあります。でも、その分、フィールドで誰よりも…と。この体格だからこそ、ディフェンス、ターンオーバー(攻守逆転)のところへ取り組んできました。いままでにない選手の道を、作っていきたい」
 
 いずれは新しいポジションでプレーするかもしれないが、学生シーンでは現在のFLを続ける。10月11日には神奈川・大和スポーツセンター競技場で筑波大との対抗戦の全勝対決を迎える。

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