国内 2025.10.01

静岡ブルーレヴズが高校生世代のユースチーム設立。田井中亮範代表に訊く。

[ 明石尚之 ]
静岡ブルーレヴズが高校生世代のユースチーム設立。田井中亮範代表に訊く。
左から田井中代表、小池監督(©SHIZUOKA BlueRevs)

 静岡ブルーレヴズは9月22日、高校生世代のユースチーム「静岡ブルーレヴズ U18」を設立したと発表した。
 リーグワンとしては初の試みだ。

 10月から中学3年生や高校生を対象に体験会を開き、来年4月から本格始動する。

 活動場所はトップチームと同じヤマハ大久保グラウンド。普段の活動日を火曜から土曜の5日間とする。

 代表には育成・普及部長の田井中亮範氏、監督には育成・普及担当の小池善行氏が就く。

 田井中代表は2000年にヤマハ発動機入社、7シーズンを選手として過ごした。
 チームに復帰した2008年からは、チームマネージャーや主務、試合運営、地域連携など多様な業務を担い、2シーズン前から育成・普及に従事している。

 小池監督はセコム、横河電機、ヤマハで活躍した元SH。セブンズ日本代表のキャップを持ち、日本協会の公認S級コーチ資格も有する。
 ユース世代の指導経験は豊富で、アザレア・セブンやクリーンファイターズ山梨でも監督、ヘッドコーチを務めた。

 設立の背景などを、田井中代表に訊いた。

――いつ頃から動き出したかを教えてください。

「ラグビー人口やチーム数の減少で、高校生がプレーする環境は以前から限られてきていましたが、特に静岡県西部はそれが顕著でした。西部にはいま、ラグビー部のある単独校が浜松工と浜松湖北の2校しかありません。われわれの拠点である磐田や隣の袋井、掛川には一つもないんです。

 ヤマハ時代から課題と感じていました。それで、なんとかできないかと動き出したのが1年ほど前です。
 2年前から合同チームでも全国大会に出場できるようになったり、昨年から学校の部活動とクラブの複数登録が認められました。これを生かせば、上手くチームを運営できるのではないかと。
 練習環境や指導環境を整備し、それぞれの学校から集まることで、合同チームとして花園を目指せると思いました」

――具体的には何から始めたのでしょう。

「静岡県ラグビー協会の専務理事と県西部にある高校の校長先生を訪ね、こうした課題があり、こんな構想があると話をさせていただきました。
 ブルーレヴズがユースチームを作っても、現行の規定では花園を目指すには各生徒たちが通う学校にラグビー部を作る必要があります(クラブチームの出場は認められていない)。

 ただ、いまは学校の先生の働き方を見直している最中で、部活動は縮小傾向にあります。そんな中で、新たにラグビー部を作るのはなかなかハードルが高いと言われました。

 前向きに捉えていただいている高校が多いのですが、部を作ればそこに顧問を置き、大会があれば引率しないといけないんです。引率は学校の教員や職員、または外部指導員でないとできません。

 全国高体連の規定では代表者1校の引率でよいとされているのですが、静岡県では現状、その記載はありません。代表をお願いされた学校からすれば、ケガの対応や責任問題などを考えると慎重にならざるを得ない。まずはそこをクリアできるように、ご相談させていただいています」

――ブルーレヴズのコーチを外部指導員に据えることはできないのでしょうか。

「外部指導員ができた背景は、先生の負担を軽減する、支援するためです。そうした先生方が顧問をしている部活に優先して外部指導員を充て、県の予算をつけていくんです。なので新たに部を作ってそこに外部指導員を充てることは、現実的ではないと言われています。

 ただ、部活動は地域移行に向かう流れがあるので、こうした規定も変わっていくと思っています。
 加えて、いまの中学生を思うと、スピード感を持ってできることは進めないといけない。まずは、県西部でもラグビーを続けられる環境を先行して作ります。並行して、花園に出られるように協議していきます」

――1年目はどのくらいの部員数を見込んでいますか。

「理想ですが15人は入ってきて欲しいと思っています。3年後には45人ほどの部員で花園出場を目指しています」

――軸は静岡ブルーレヴズRSの中学部が軸になる。

「そうですね。中学生は1学年で15人ほどいます。ただ、これまでは続ける環境がなくて辞めてしまう子を何人も見てきました。
 ラグビーをするからその学校に行くのではなく、自分の行きたい高校に行ってラグビーを続けられるのが理想だと思っています。進学校に行きたい子もいれば、工業や農業を学びたい子もいます。
 われわれは、ラグビー部がないから辞めてしまうことを避けたいんです。もちろん、県外の強豪校にチャレンジする子も応援します」

――ビジョンには「静岡から世界で活躍する”未来のレヴズ”を輩出する」と掲げています。

「ヤマハ発動機ジュビロの頃から、在籍選手に地元のプレイヤーはいたことがありません。静岡にあるプロのクラブである以上、夢や憧れを生むことが使命だと思っています。
 地元の子どもたちをしっかり育成して、トップチームを目指したいと思えたり、トップリーグに行く可能性を作っていきたいです。トップチームと同じ施設を使えるのもひとつの魅力だと思っています」

――ブルーレヴズの”育成組織”でもあるわけですね。

「静岡ブルーレヴズがどういうラグビーをしていくのか、ここはトップチームとしっかり連携したいです。コーチングスタッフや選手たちに来ていただき、例えば日野ちゃん(剛志/HO)や長谷川慎さんにセットプレーを教えてもらう機会を作っていきたいです」

――ゴール(目標)のひとつに、「未来の指導者の育成」を掲げています。

「育成組織は指導者を目指したいコーチ育成の場にもなると思っています。クラブとしても指導者のリソースを持つことは大事で、そこからトップチームのコーチになるケースも出てくるはずです」

――ユースチームでは、どういうラグビーを志向していきますか。

「監督の小池と話をしている最中ですが、選手一人ひとりの強みを引き出すことは、コーチングをする上で大きなポイントの一つになります。コーチが勝つためにやっているわけではありませんので、子どもたちがこうなりたい、こうしたいという気持ちを尊重していきたいと思っています」

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