国内 2025.12.25

開幕前は日本代表に参加。ブラックラムズ・山本秀の「準備」への意識。

[ 向 風見也 ]
開幕前は日本代表に参加。ブラックラムズ・山本秀の「準備」への意識。
12月20日・S東京ベイ戦に出場した山本秀[S東京ベイ/FL](©︎JRLO)

 開幕戦に出られなかった。リコーブラックラムズ東京の山本秀は、それでも気落ちはしなかったと強調する。
 
 その日とて、急にレギュラーに繰り上がってもよいような心構えでいたのだ。「準備」という言葉を繰り返す。

「僕の準備は1年間を通して変わらない。メンバーだから特別に準備するとか、メンバーに入れなかったから準備しないではなく、いつでも準備は、しています」 

 12月13日、東京・秩父宮ラグビー場での国内リーグワン1部・初戦では、東京サンゴリアスサンゴリアスに15-29で敗れるのを見届けた。心機一転。20日の第2節ではFLで先発入り。千葉・フクダ電子アリーナで6番をつけ、「準備」の価値を示した。

 前半2分、前年度準優勝のクボタスピアーズ船橋・東京ベイから先制トライを奪う。敵陣ゴール前右中間でスピードをつけてパスをもらい、タックラーに当たり勝ってフィニッシュした。

 続く22分には、ハーフ線上の右中間あたりで好スティールを決める。孤立したランナーの手元へ、素早く腕を入れた。

 その後もきれのある動きをアピールした。25-29だった後半16分に退き28-50で2連敗も、公式で「身長190センチ、体重108キロ」の身体にシャープさが増しているのは証明した。
 
 本人は、内なる進歩を実感する。

 というのも昨季終了後から、日本代表の関連活動へ参加することが増えていた。

 12チーム中8位に終わったレギュラーシーズンで出場機会はわずか2試合に止まりながら、控え組の一員としてプレーした23歳以下日本代表とのトレーニングマッチの動きをエディー・ジョーンズヘッドコーチに評価されたためだ。

 10月中旬からの約1か月半は、国内外におけるキャンペーンへ帯同した。トップとの激しいトレーニングを通し、底力と、底力を本番で発揮するのに必要なものを手にすることができた。

「レベルの高い選手とプレーさせていただいてフィジカル面が伸びたり、プレーの選択肢が増えたりしたのもあります。ただ、自分のなかで一番、大きいのは、自信がついたことです。それまでだとミスを恐れて消極的になってしまっていた時も、思い切ってプレーできる。それが、きょうのトライなどに繋がったかな…と」

 続けるのは、チャンスを与えられたことへの感謝の念だ。

「エディーさんに見つけていただいて、認めていただいて、やってきたことは、間違いではなかった…と」

 11月以降は欧州で、南アフリカ代表、アイルランド代表、ウェールズ代表、ジョージア代表と連戦した。

 ウィークエンドのゲームに向け、週の序盤には高強度のセッションを実施。日によっては雨で足場の悪いフィールドでのトレーニングを強いられ、かつ、故障者の続出で本番仕様のシミュレーションをするのに工夫を要した。

 限られた条件下で結果の求められる集団にいられたのがよかった。タフになり、やはり「自信」がついた。

「さっき(リーグワンの話題で)も言ったのですが、常に準備は怠らずにいようと思いました。怪我があり、いつ(出場の)チャンスが転がってくるかがわからなかったので、いつでも準備をしていよう…と。それから、きつい練習を約1か月やり続けたことが、自信になっています」

 現地時間22日、25-23で制したジョージア代表戦では、ベンチ入りしながら出番がなかった。

「キャップを獲ること(代表戦出場)はできなかったですが、メンバー(選考)、試合の緊張感があり、リザーブになった時の取り組みもいい経験になりました」

 本番直前のウォーミングアップに際し、どんな手順で身体をほぐすかまで事細かく教わった。ルーティーンが定まった。

 その延長線上で、いまは国内リーグに臨む。12月27日は佐賀・駅前不動産スタジアム で、三重ホンダヒートとの第3節に挑む。

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