【南アフリカ記者コラム】出来が悪くても勝つ。欧州ツアー遠征、全勝締め。
南アフリカ代表は週末、ダブリンでアイルランドを24-13で破り、13年間続いた敵地での「勝利なし」の状況に終止符を打った。
この混乱と狂気に満ちたテストマッチは、現在のスプリングボクスが世界のラグビー界で頭一つ抜けた存在であることを改めて証明するものとなった。
アイルランドは近年ボクス相手に何度か勝利しており、さらにラシー・エラスマスHCがこれまでアイルランドの首都で一度も勝っていなかったことが、この試合に一層の緊張感を与えた。
実際、ボクスはこの試合にまるでワールドカップ決勝のような“一発勝負”の意気込みで臨んだ。
アイルランドはボクスの猛烈なフィジカルの圧力に耐え切れず、19試合連続無敗の本拠地で規律が崩壊した。
イングランドのレフリー、マット・カーリーは試合中に6枚のイエローカードを提示し、そのうち1枚はレッドに格上げされた。アイルランドにはさらに2~3枚出してもおかしくない場面もあった。
前半終了直前から後半開始直後にかけて、アイルランドは圧倒的なボクスのプレッシャーの中で次々と選手を失い、一時は12人でプレーする事態となった。
南アフリカの勝利――2012年以来、ダブリンで4試合ぶりの勝利――は、古き良きスプリングボクスのラグビーにもとづくもので、圧倒的なパワーがホームチームにはあまりに手強かった。
アイルランドは前線で粉砕され、ボクスのパワーゲームにまったく対応できず、反則に走るしかなかったのだ。
最終的にアイルランドは4枚のイエローと、LOジェームズ・ライアンへのレッドカードを受けた。ライアンは19分、ラックで“肩から”年間最優秀選手であるHOマルコム・マークスの顔に突っ込んだ。レフリーはバンカーに送り、最終的に20分レッドへアップグレードされた。
しかし、ツアー序盤に南アのフランコ・モスタート、ルード・デヤハーの両LOが即時レッドを受けたことを考えると、今回の判定はまたしてもジャッジをめぐる疑問を呼んだ。
本来ならストレートレッドであるべきだったという声もある。
ライアンのプレーはこの日のアイルランドがいかに規律を欠き、とにかく妨害に徹する戦術を取っていたかを象徴していた。
彼らは合計16のペナルティを犯した。まるで、ボクスを“泥仕合”に引きずり込むことだけが勝つための唯一の手段だとでも思っていたかのようだった。
一方で、試合序盤はボクス側も危うい場面があった。SOサシャ・ファンバーグ=ムンゴメズルがアイルランドのWTBトミー・オブライエンに激しく衝突したが、肩と肩の接触が最初だったとはいえ腕がたたまれたままで、「ペナルティのみ」で済んだ。イエローでもおかしくない場面だった。
この試合の真の功労者はウィルコ・ロウ、トーマス・デュトイ、マークス、ヨハン・グロベラー、ボーン・フィンター、ゲルハルト・スティーンキャンプというボクスのフロントロー陣だ。
スクラムでは完全に支配し、レフリーはアイルランドに複数のイエローカードを出すしかなかった。
ボクスは4トライ対1トライとし、そのうち3つは見事なBKのトライだった。
開始5分、FBダミアン・ウィレムセがCTBダミアン・デアレンデの巧みな仕掛けからトライを挙げ、アイルランドの守備網を切り裂いた。
2つ目のトライは、49キャップ目を迎えたベテランSHコーバス・ライナーによるもので、ボクスのパックが純粋な力で押し込んだものだった。
その時、アイルランドは13人しか残っておらず、複数回のスクラムリセットの末、ライナーはショー&ゴーから19本目のテストトライを決めた。
続いて、極めてエキサイティングな若手SOサシャ・ファインバーグ=ムンゴメズルが、得意の“ラップアラウンド”からスピードとパワーを活かして後半にトライを奪い、これもまた彼らしい形となった。
しかし、スクラム支配を除けば今季のボクスにとってもっとも出来が悪い試合のひとつであり、40~50点差まで狙えたはずが、フィニッシュの精度や勝負所での落ち着きに欠けた。6月から数えて14試合目という疲労も要因だったかもしれない。
また、ダブリンでの勝利への強い渇望と、コーチ陣がよく口にする“チェックリストの1つを埋める”という目標――世界制覇への冷徹な歩みにおける一段階――も影響したのだろう。
とはいえ、勝利という目的は達成された。これで、今回の欧州遠征でフランス、アイルランドという北半球の2大強国をいずれも快勝したことになる。
ボクスはダブリンで、たとえ出来が悪くても世界最強であることを明確に示した。



