フランス・トップ14が開幕。王者トゥールーズはFBラモスの活躍で白星スタート。

トップ14の2025-26シーズンが開幕。スタッド・フランセとモントーバンが開幕戦の火ぶたを切った。
昨シーズン、ヘッドコーチの解任やディレクター・オブ・ラグビーの離脱など、激動のシーズンを過ごしたスタッド・フランセ。降格の危機を辛くも回避し、12位でシーズンを終えた。対するモントーバンは、「プロD2残留」を目標としていたのに、勢いに乗って優勝し、15年ぶりにトップ14昇格を果たした。
しかしこの開幕戦では、スタッド・フランセがテンポを上げると、モントーバンはついていけず、トップ14への準備ができていなかったことが見て取れる。最終的にスタッド・フランセが7トライを奪い、47-24で快勝。一方、モントーバンも4トライを挙げていることから、トップ14のテンポと強度にいち早く慣れ、彼らの攻撃的なラグビーができる時間帯を増やしていきたい。
この試合が行われたのは、パリ市が所有するスタッド・ジャン・ブーアン。今シーズンからサッカーのリーグ・アンに昇格したパリ・フットボールクラブ(パリFC)と共同使用することになり、リーグ・アンでは人工芝が禁止されているため、ハイブリッド芝に張り替えられた。
パリFCは、2024年11月、ラグジュアリーブランドを総括するLVMH(ルイ・ヴィトン・モエ・ヘネシー)のグループ企業アガシュ・スポーツが52.4%の株を取得し筆頭株主となった。さらに、エナジードリンク企業のレッドブルも10.6%取得して経営に参入。LVMHの資本力と、すでにサッカーでオーストリアのザルツブルク、ドイツのライプツィヒを運営しているレッドブルのノウハウで、今後大きく発展していくことが予想される。
レッドブルはラグビーでも、セブンズの国際大会「HSBC SVNS 2025」の公式エナジードリンクパートナーとして、またプレミアシップのニューカッスルを買収し、今季からクラブ名も「ニューカッスル・レッドブルズ」として参入している。
スタッド・ジャン・ブーアンの集客数を見ると、すでにパリFCの公式戦には17,345人が来場。一方、スタッド・フランセの試合の観客数は11,441人だった。ジャン・ブーアンの向かいには、毎試合47,000人近くが集まるパリ・サンジェルマンの本拠地「パルク・デ・プランス」もあり、パリにおけるスポーツ勢力図の今後の変化も気になる。
今回の開幕節では、7試合中4試合でアウェイチームが勝利を収める興味深い結果となった。
昨シーズン、初のプレーオフ進出を果たしたバイヨンヌは、55年ぶりにペルピニャンのホームで勝利を手にした(26-19)。芸術の域とも言える正確なクロスパスで数々のトライを演出してきたSOカミーユ・ロペスが引退したものの、この夏の代表のNZ遠征で10番を務めたジョリス・スゴンがその後を継ぎ、さらにこの試合には出ていなかったが、ウエールズ代表SOガレス・アンスコムも獲得している。
一方、ペルピニャンも、スコットランド代表FLジェイミー・リッチーや、NFLに挑戦していたオーストラリアのBKジョーダン・ペタイアらを獲得し、充実した戦力補強を行なっている。彼らが参戦して、チームにどのような影響を与えていくのか楽しみだ。
しかし、開幕したばかりだが負傷者も相次いでいる。プレシーズンマッチでバイヨンヌのPRテビタ・タタフは足首を負傷し、ペルピニャンのLOポソロ・トゥイランギは開幕戦前日に右脚疲労骨折と発表された。両選手ともフランス代表での活躍が期待されているだけに、不安が残る。トゥイランギは4~5週間、タタフは4~5ヶ月の離脱が見込まれている。フランス代表の右PRウィニ・アトニオも負傷しており、11月の代表戦メンバーも気になるところだ。
ポーは、「ビジターチームにとって鬼門の地」と言われるカストルのホームで、代表のNZ遠征に参加していたCTBエミリアン・ガイユトンやWTB/FBテオ・アティソグベという主力を欠きながらも、白星スタートを切った(17-15)。今シーズン、クラブ初のチャンピオンズカップに参加するポーは、その意気込みを初戦で示した。
ちなみに、開幕前にトップ14のSNS公式アカウントで、数人の選手が自分の名前を音節ごとに区切って発音している動画を投稿し、その中でアティソグベは「ア・ティ・ソ・ベ」と発音していた。これまで、現地の実況や、代表のファビアン・ガルチエ ヘッドコーチ(HC)が「アティソグベ」と言っていたので、それを用いていたが、今後は「アティソベ」と記載する。
トゥーロンも敵地で初戦を勝利で飾った(27-17)。プレシーズンマッチに引き続き、この試合でも新加入のイタリア代表CTBフアン・イグナシオ・ブレックスが早くも攻守でチームをリードしている。昨季でNZに帰国したCTBレスター・ファインガアヌクのようなXファクター的な要素はないが、ブレックスのような落ち着いた経験豊富な選手を若いチームは必要としていた。トゥールーズやボルドーを脅かす存在になるだろうか。
ボルドーはプレシーズンマッチでSHマキシム・リュキュ(親指)、CTBヨラム・モエファナ(肩)が負傷し、リュキュは2ヶ月、モエファナは3ヶ月戦列から離れる。主力2人を欠いた状態であったが、23-18でラ・ロシェルに勝利し、この日もスタッド・シャバン・デルマスを満員にした32000人のサポーターの期待に応えた。
敗れたラ・ロシェルは昨季に引き続きペナルティが多かった。今季、SHノラン・ルガレックが加入しており、夏の代表のオールブラックス戦でコンビを組んだSOアントワンヌ・アストイと共に、プレーにスピードや動きを与える。ジョージア代表WTB/FBダヴィト・ニニアシヴィリも獲得していることから、従来のFWのパワーで圧倒するスタイルから進化させていこうという意図が読める。
ラグビーチャンピオンシップに参戦中のワラビーズから、ラ・ロシェルの開幕戦の準備をするために呼び戻されたと伝えられていたLOウィル・スケルトンの姿はこの日のピッチには見られなかった。
「近いうちにウィルをピッチで見ることになるでしょう。今、彼に最も必要なのは休養なのです。ただ、この件はワラビーズの管理下にあるので…」と、試合後、記者の質問に答えるロナン・オガーラHCは歯切れが悪い様子だ。
リヨンは、ラシン92に32-7で快勝し、今季プレーオフ進出を目指すチームであることをはっきりと示した。一方、ラシン92は、ディシプリンの低さ、キックオフでのキャッチミス、そしてスクラムでのペナルティを繰り返し、自ら勝ちを譲った形となった。
開幕節の幕をおろしたクレルモン対トゥールーズは、序盤からトゥールーズのCTBピタ・アキ、FLテオ・ンタマックが脳震盪で退場するほどの激しいぶつかり合いだった。トゥールーズが活動を再開したのは8月11日と14チーム中最も遅く、連携が取れていない場面も見られたが、そんな状態でも勝ち方を知る王者の貫禄を見せた(34-24)。
特にユーゴ・モラHC が「ラモス祭り」と言うほど、FBトマ・ラモスが、GKは100%成功、キックパスでトライを生み出し、50:22も見られた。ボールを持っては相手DFに切り込みチャンスを作った。圧巻である。