ワールドカップ 2025.08.31

「2か月で戻って来い」で奮起。齊藤聖奈[女子日本代表/NO8]

[ 明石尚之 ]
「2か月で戻って来い」で奮起。齊藤聖奈[女子日本代表/NO8]
164センチ、72キロのバックロー。PEARLSに所属している(撮影:松本かおり)

 女子日本代表”サクラフィフティーン”不動のNO8、齊藤聖奈は3大会目のワールドカップに挑んでいる。

 初出場となった2017年のアイルランド大会は、キャプテンとして臨んだ。
 以降もキャップを積み重ね、今大会直前のイタリア戦で代表初の50キャップを達成。いまはチームの最年長(33歳)として、やるべき役割を果たしている。

「最初のワールドカップは無我夢中で目の前のことを必死にやっていました。2回目は少し余裕が出てきて、今回は最年長なのでチームを下からプッシュしていきたい。あまり前で話したりはしませんが、選手それぞれをサポートできる声かけは意識しています」

 大会前の一時期は、出場が危ぶまれた。3月の強化合宿中に左膝の半月板を負傷。その翌週には手術もした。神戸にいる「膝のスペシャリスト」に執刀してもらった。

「リハビリも本当にたくさんの方にサポートいただきました」と感謝する。
「順調にいけば」全治3か月。それを約1か月も縮められた。指揮官の要望に応えたのだ。

「レスリーとは1on1のミーティングで、これからどういうプロセスで復帰していくかを細かく話すことができました。2か月で戻って来いと。そう言われたらやるしかない、絶対に負けないと思いました」

 ケガをした瞬間は「やべえ」と思ったけれど、すぐに「なるようになるやろ」と切り替えた。
 このメンタリティを持つ最年長が、チームにもたらす影響は大きいだろう。

 ワールドカップでの大事な初戦(アイルランド戦)を落として迎えた今週も、チームはギアを上げられた。
 移動日の翌日に設定されていた強度の高い練習では、「みんなのエナジーがものすごかった」と長田いろは主将が証言している。

 齊藤はその日々をこう振り返る。
「敗戦から立ち直るのはチームとして結構難しかったけど、いまはニュージーランド戦に向けてしっかり準備できています。2大会連続のチャンピオンと戦える機会はなかなかない。ワクワクしています」

 アイルランド戦では、強みとしてきたラインアウトで苦戦を強いられた。FWの一員として「悔しい思いをした」と語る。

「もう一度見直して、準備してきました。次は自分たちのペースに持っていきたいです」

 ラインアウトでマイボールを確保できれば、武器であるモールを使える。
 マーク・ベイクウェルFWコーチのもとで、「1日何本やんねんってくらいやってきた」。その成果を出したい。

 復帰戦となった7月のスペイン戦後には、こう展望していた。
「NZは自分たちよりも1.5倍、2倍近く大きい選手がいっぱいいます。その選手を避けながらどうやって前に進むのか、どこで(ジャンパーを)上げてモールを作るのかを考えていかないといけない。うまくいっているからといって、同じところばかりというわけにもいきません」

「NZはフィジカルチームでもあります。ひとつのコリジョン、ひとつのブレイクダウン、一瞬のモーメントに負けないようにしたい」とも口にした。

 ニュージーランド戦は、齊藤自身にとって特別な舞台だ。
 NZ国内の最高峰リーグであるスーパーラグビー・アウピキに 、2024年に日本人として初めて挑戦した。

 そこで得た体感を、仲間に伝えたい。「同じ人間やで」と。
「確かにそうやと思いました」と、言ってくれる後輩たちも出てきた。

 在籍したチーフス・マナワで同僚だったFLトゥクアフ・ケネディとの対戦を、心待ちにしている。
「(NZでは)一緒の家で過ごして、ずっとお世話になったので。とても楽しみです」

 臆することなくぶつかりにいく。

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