指揮官は「ジシンモッテネ」とエール。石田吉平が作るオリジナルとは。

失敗を活かす。
ラグビー日本代表の石田吉平は、続けて先発した7月5、12日の対ウェールズ代表2連戦を1勝1敗とした。
テストマッチデビューを飾ったこのシリーズでは、持ち場のWTBで鋭いステップを披露。ビッグゲインやトライアシストに繋げた。
一方、高いキックの捕球合戦で課題を残した。
身長167センチと一線級にあっては小柄だ。国内シーンでこそ持ち前のばねと強気の姿勢で制空権を手繰り寄せるものの、今度の国際舞台ではやや手こずった。空中で捕る体勢に入りながら、長身の相手に手元をはたかれることがあった。
その後、約9年ぶりに復帰して2季目のエディー・ジョーンズヘッドコーチに個人面談をしてもらった。
ハイボールキャッチの成功率アップへ、具体的な伸びしろを聞いた。
「エディーさんとビデオを見ながらレビューをもらいました。ジャンプ力は(敵と)同じだった。あとは競る技術、(飛ぶ)タイミングについて(助言があった)」
空中で対峙する選手へ、首尾よく身体をぶつけるのが肝だとわかった。それをするためのコース取りもまた。
経験を肥やしにレベルアップする。
「(ボールが落ちてくるところに)回り込むようにしてしまうと、相手に(跳躍のための)スペースを取られる。そうしていい形で飛ばせてしまうと、高さでこちらが不利になってしまう。だから、相手に跳ばれないように、跳ぶ。あとは、(球の)落下地点にどれだけ速く行けるか、です」
2024年は7人制日本代表として、オリンピックパリ大会へ出場した。15人制にコードチェンジして初めて参加したリーグワンのシーズンを経て、ジョーンズ率いるナショナルチームに呼ばれていた。
再始動したいまは、8月30日より参戦のパシフィック・ネーションズカップ(PNC)を見据える。宮城・ユアテックスタジアム仙台でのチーム初戦へも、14番をつけてスタメンで出る。カナダ代表とぶつかる。
さかのぼって23日、宮崎合宿の練習公開日に取材に応じた。
長田智希、木田晴斗、マロ・ツイタマといった、昨年以前より代表招集歴のある実力者と定位置を争っていた。
実戦形式のセッションでは、ひとつの仕事が済めばすぐに起き上がり、次のスペースへ向かった。チームが「ゴールドエフォート」と呼んで大切にする、下働きを意識した。
「自分は、(ライバルと)違う色で勝負しないといけない。フットワーク、ボールを持っていない時の働きでアピールしたいです。劣っているところが多いなか、強みを活かしていけるようにチャレンジします。(ジョーンズからは)ミスしてもいいから思いっきりやれと言われている。そこで、勉強させていただいています」
再三、強調するのは「違う色」の視点だ。アメリカンフットボールの選手の動きを参考に、オリジナルの走りを紡ぐ。感覚を言葉に置き換える。
「アメフトをもとに、捕まらない動きを研究しています。ステップ、ターン、時にはしゃがむことも…。『ラグビー選手』ではなく、『石田吉平というプレーヤー』になっていかないと」
憧れのアスリートには、元サッカー日本代表の本田圭佑を挙げる。堂々と響くフレーズを選ぶ。
「毎日、新しい景色を見せてもらって、まだまだできると思いながら取り組めている。幸せなことです」
カメラの前で思いを明かしていると、ちょうどそこへジョーンズがやってきた。石田の次にメディアに対応するため、所定の区域に訪れたのだ。日本語で声をかける。
「オー! セブンズノスター! ジシン、モッテネ!」
スポンサーボードの脇の椅子で待機し、石田が話し終えるや笑顔で拍手した。