国内 2025.08.28

坂手淳史、ワイルドナイツ始動前に「今後にとってプラス」となる時期を過ごす。

[ 向 風見也 ]
坂手淳史、ワイルドナイツ始動前に「今後にとってプラス」となる時期を過ごす。
熊谷市内でトレーニングに励む坂手淳史(筆者撮影)

 変わろうとしている。

 埼玉パナソニックワイルドナイツが8月25日、同年12月からの新シーズンへ本格的な全体練習を始めた。

 前年度まで6季主将を務めたHOの坂手淳史は、雌伏の時に「暇なんで」と伸ばした口ひげ、あごひげをそのままに笑った。

「始まったばかりですけど、楽しくやっています。また(自軍の)ラグビーを思い出し、どんなものを上乗せしていくか…。(自身も)いい状態で戻ってきました」

 旧トップリーグ時代から通算5度優勝の名門。現行のリーグワンでは、レギュラーシーズンで圧倒的な試合運びで白星を量産しながら頂点からは遠ざかった。初年度に国内連覇を果たしたものの、一昨季まで2度続けて準優勝。今年6月までの昨季では4位に終わった。

 捲土重来。陣容を改めた。

 2014年度からチームを指揮してきたロビー・ディーンズが、エグゼクティブアドバイザーに転身。遠隔でのミーティングや定期的な来日して、新しい首脳陣を支える。

 後任のヘッドコーチは金沢篤だ。

 慶大での同職を経て2019年よりワイルドナイツのスタッフを務め、内部昇格した。昨季からディーンズとマネジメント層を交えたミーティングへ招かれるようになり、就任への意欲を「やんわり」と問われることもあった。

 体制が切り替わるタイミングで、自然な流れで打診された。

「自分にとっては誰と仕事をするかが大事だったので、それほど(役職を上げることに)積極的だったわけではありませんでした。ただお話をいただき、自分で考え、『得ようとして得られる機会ではない。是非、受けよう』と思いました」

 指揮官となれば、選手選考をはじめ「決断すること」は増えるだろう。だから迷わないこと、迷うそぶりを見せないことが求められると自覚する。それでも、「いまのところ、実際のフィールドでのコーチングで大きく変わることはない」。クラブのよさも不変だと話す。

「ひとりひとりのオーナーシップが、このクラブの根幹にあると理解しています」

 集まってきた各国の猛者が、クラブの唱える戦術、戦略へ主体的に向き合うのがワイルドナイツの「オーナーシップ」。それを支えるべく、新たなコーチンググループが結成された。

 アシスタントコーチには元日本代表の堀江翔太、元オーストラリア代表のベリック・バーンズという両OBがいる。それぞれスクラム、攻撃を担う。

 選手側もリーダー陣を改革した。

 ずっと防御のリーダーだった稲垣啓太が攻撃担当になった。金沢のリクエストの意図を組み、接点周りで使うスキルを磨き直す。

 一方、もともと攻めを見ていた坂手は守りを託された。坂手自らが志願し、その立場になった。

「僕の理解度を上げながら、チームにどんなものをアナウンスできるか(が鍵)。もっと驚異的にしていきたいです。去年は、優勝できるディフェンスではなかったので」

 主将を任されたことのある日本代表とは、現在、距離を置いている。坂手が最近のスコッドに名を連ねていないことについて、代表関係者が「(スタッフに)休ませる意図もあるのでは」と説いた一方、本人は多くを語らない。

 その代わり、ナショナルチームに加わらなかったこの季節をとことん前向きに捉えた。コンディションの再生に努めた。

 堀江も師事する佐藤義人トレーナーのいる施設へ「1週間、行って、1週間、休んで、1週間、行って、1週間、休んで、その後は4週間…」。京都にある砂浜、坂道を走りまくり、ジムでも己を追い込み、体内の軸を取り戻した。

「自分自身、ラグビー選手として伸びていくために必要なトレーニングをしていくことは(代表に)呼ばれても、呼ばれなくても変わらないです。今シーズン、僕自身がその(集中して鍛える)時間を作れたことは、今後のラグビー人生の数年にとってプラスになった。むちゃくちゃ、よかったですよ。きつかったですけど」

 アマチュアだった10代の頃からハードタックルでスタンドを沸かせてきて、いまや32歳となった。ワイルドナイツで主将を続投するかは未定で、「どんな立場になっても自分のやるべきことをやってチームにいい影響を。僕もおじさんになってきた。若い人を底上げすることも仕事になる。意識していきたいです」。変わり続ける組織にあって、自らにも変革を課す。

金沢篤 新HC

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