日本代表 2025.08.26

突然の練習中断。エディー・ジョーンズヘッドコーチの意図は。

[ 向 風見也 ]
突然の練習中断。エディー・ジョーンズヘッドコーチの意図は。
身振りを交えてコメントするエディー・ジョーンズHC(筆者撮影)

 選択が迫られた。

 ラグビー日本代表は8月22日、17日からの宮崎合宿(BKのみ15日より)を本格化させていた。

 それまで現体制があまり採り入れなかった攻め方を、実戦形式を通して導入していた。ここでエディー・ジョーンズヘッドコーチが求めるのは「オーガナイズ!」だ。その都度、人のいない箇所を見つけ、組織的に連携を取って球を運ばせたかった。

 陣形を整えボールを呼び込む「オーガナイズ!」の動きが疎かになったと見れば、ジョーンズは大声を張り上げる。

「オーガナイズ!もう3回、言っているよ!」

 攻める側が引き締まり、効果的なアタックを決めると、ボスは「ヨクナッタ!」と日本語で褒めたり、「何でギャーギャー言われないとできない?」とは発破をかけたり。ハンドリングのミスがあるたびに仕切り直しとなり、攻守が入れ替わる。

 山場となりうるシーンを迎えたのは、その延長線上でのことだ。

「歩いてセットしているなら、やっていてもしょうがない!」

 それまで息つく暇を与えてこなかったジョーンズが、突然、トレーニングを打ち切ったのだ。

 ここでそれぞれのポジションに散っていた選手は一か所に集まり、意識を共有し、再び各々の持ち場に戻った。

 攻防が再開した。

 まもなく、無事にメニューが消化された。

「あの時はジャパンで求められているスタンダードでできていなかった。このままやり続けるか、それともやめるかの判断を促したのです」

 ストップの意図について指揮官自らが振り返ったのは翌23日だ。

 2001年にオーストラリア代表を率い始めてから複数国を指導し、昨年ジャパンを束ね始めたのも約9年ぶり2度目。初めて日本代表を教えた頃も、セッションが弛緩したと見れば容赦なく切り上げていた。

 止めた時のアプローチに違いがあると、本人は強調する。

「10年前にこのような状況があったら私はわめき散らしていました。しかしいまは選手に自主性を持ってもらい、選択肢を与えます。そうすれば、大概は正しく判断してくれます」

 今度の宮崎合宿では、スケジュールに微修正があった。

 始動時こそ9時頃からにしていた午前練習を朝7時スタートに繰り上げた。キャンプ地が極端に暑かったためだ。

 ジョーンズが「判断を促した」という件も、早朝の出来事だった。ちなみに空は曇っていた。

 SHの藤原忍は、国代表同士のテストマッチの厳しさを踏まえて述べた。

「実際に朝イチでどよんとした入りでした。試合が始まってすぐにそれをしちゃったら、テストマッチはそれで終わってしまう。改善しないと」

 SHの定位置を争う26歳だ。

 7月中旬まで切磋琢磨した齋藤直人がフランスのトゥールーズに所属している関係上、今回のキャンプへは帯同しない。一方、福田健太、北村瞬太郎といった国内勢とアピール合戦を繰り広げる。

「若い選手が増えたのでものすごくエナジーを感じます。(中堅とあり)リードしないとダメだなというプレッシャーもあります」

 6、7月の活動で主将だった36歳のリーチマイケルが個人的事情で招集外となったのを受け、こうも頷く。

「(リーチが)いるか、いないかで雰囲気が変わることを実感しています。エディーさんには『ひとりひとりがリーダーだと思って引っ張っていけ』と言われます」

 30日から参加のパシフィック・ネーションズカップ(PNC)では、カナダ代表、アメリカ代表といった北米勢、前回優勝したフィジー代表をはじめとした環太平洋勢とぶつかる。前年に代表初選出の元気印らがオーナーシップを持って戦う。

SH藤原忍

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