プレーオフで爪痕。スティーラーズのマイケル・リトルは「コーチに感謝」

負い目は感じていなかった。
コベルコ神戸スティーラーズのマイケル・リトルは5月24日、東京・秩父宮ラグビー場にいた。国内リーグワン1部のプレーオフ準決勝へ、アウトサイドCTBで先発した。
対する東芝ブレイブルーパス東京には、4月6日のレギュラーシーズン第14節で28-73と大敗していた。
しかし、本拠地の神戸総合運動公園ユニバー記念競技場でのこの80分は、今度のノックアウトステージとは無関係だ。短期決戦は特別なのだと、当時不出場のリトルは確信して述べた。
「(対戦した)タイミングが(大量失点の)大きな要因となっていました。一方、準決勝となればタイトなゲームも増える。お互いがベストな状態で並びます」
力を発揮した。
キックオフ早々、敵陣10メートル線付近右の区画をえぐる。ハイタックルの反則を誘い、約2分後に先制するまで自分たちのアタックを継続させた。
続く11分にも、自陣10メートルエリア右中間から約40メートルを駆け抜けた。
守っても激しいタックルを重ねた。特に後半13分には、自陣ゴール前右隅でフリーの走者を追走。タッチラインの外に出した。
もっとも試合は3-31で敗戦。逸機を悔やんだ。
「チームのためにベストを尽くしましたが、残念なことに結果はついてこなかった。敵陣22メートルエリアへ入った好機を得点に変える力で、相手が上回っていました。自分たちの精度を欠いてしまっていた。一方、ブレイブルーパスさんが素晴らしいディフェンスをしていた。いいシステムが敷かれていた。また、コリジョン(身体衝突)の部分で苦労させられました」
身長180センチ、体重98キロの32歳。以前は限られた出場枠を争う「カテゴリB」に区分も、今季から無制限で出られる「カテゴリA」のひとりになった。
ワールドラグビーの示すレギュレーションが変わったからだ。ルーツを持たない国で代表資格を得る条件が、当該国への連続居住5年以上から協会登録5年以上となったのだ。
2017年来日もウイルス禍で一時帰国のリトルは、この世界的な改革のおかげでスティーラーズでの出番を得やすくなった。一時は怪我に泣きながら、レギュラーシーズン18戦中11度先発した。スターターの機会を昨季より7度も増やしていた。
「ゲームタイムが増えるなか、1週、1週、身体をプレーできる状態にするのが大変でした。週明けの月曜は身体が痛いことも。それでも選び続けてくれたコーチたちには、感謝したいです」
立場を変えたことでより活躍したことで、自ずと代表待望論も引き起こすか。今夏のジャパンのキャンペーンへの思いを聞かれ、言葉を選ぶ。
「ゲームメンバーになるにはまず、(スコッドの)メンバーに選ばれることが先決です」
再来年度からはリーグワンの選手登録の仕組みが変わる。義務教育合計6年未満の「カテゴリA」は「カテゴリA-2」となり、別な外国人勢と15名中8名というオン・ザ・ピッチの人数枠を競うこととなった。
本人はこうだ。
「正直なところ、いまはその件については考えられていません。いつも、試合に向けた1週間の準備で頭がいっぱいになる」
チームは5月31日、秩父宮で埼玉パナソニックワイルドナイツとの3位決定戦を控える。