司令塔の弟はスペースが「見えている」。ワイルドナイツ山沢拓也がしたい「手助け」。

原点に立ち返る。
ジャパンラグビーリーグワン1部に加盟の埼玉パナソニックワイルドナイツが、負けたら終わりのプレーオフに突入した。
3季連続でファイナリストとなりながら、前年度まで2度準優勝に終わっている。初年度以来の頂点を見据え、地元の熊谷市出身である山沢拓也が、成功へのポイントを語った。
「自分たちのラグビーをするエリアは大事になる。そこを間違えないような判断をしていくことが、チームでの役割になります。チーム全体で繋がって、安心してプレーできるようにしていけたら」
深谷高3年時にラグビー日本代表候補となった30歳は、身長176センチ、体重84キロでしなやかなラン、パス、キックで相手防御の裏をかく。
筑波大4年ながらワイルドナイツに入り、当時のトップリーグでプレーしたのは2016年。リーグワンで現行のアーリーエントリー制度が整備されるよりも6年ほど前のことだ。
若くして才能が買われたファンタジスタは今季、怪我もありレギュラーシーズン18戦中4度の出場に止まった。もっとも直近の2試合では最後尾のFBで先発している。
「個人としてはもどかしいシーズンではありましたけど、プレーオフでは勝つことにこだわりを持つ。最後に1点でも多く取れるようにしたい」
本職で司令塔のSOには、4学年下の弟、山沢京平が立っている。きょうだいで作るラインについて、兄は言う。
「SOの手助けもFBの役割。その相手が京平で、個人的には(意見を)言いやすいし、聞きやすい。基本、京平のよさを引き出したい」
山沢拓と同じ熊谷東中、深谷高を経て明大でプレーした山沢京は、17試合で10番をつけて一時はゲーム主将も務めた。ゴールキッカーを担ったら成功率82・1パーセントを記録し、ベストキッカーにも輝いた。
弟の活躍を兄は「チームの先頭に立ってよくなってきた。中心になっています。チームがここまで勝ちを積み重ねられてきた裏には、京平の影響があるのかな」と捉える。
兄を見て弟は「僕は今年1年10番(先発SO)をさせてもらっていますけど、(兄は)それを何年間もしてきた。ずっと尊敬している。本当に凄いです」と敬意を表する。
兄はさらに重ねる。
「基本的に、彼のほうが(スペースが)見えていると思います。もう ひとつの目になってあげられたら」
リーグ戦では12チーム中2位だった。HOでワールドカップ4度出場の堀江翔太さんが昨季限りで引退し、主力SOだった松田力也がトヨタヴェルヴリッツへ移籍するなか、チームは公式戦を重ねるごとに進歩してきた。山沢拓はそのプロセスを語る。
「ワイルドナイツの芯の部分はちゃんと持ちつつも、(試合に)出る人によっていろんな色が出てきた。将来に向けてためになるというか、いいシーズンだったなと思います」
プレーオフでは25日の準決勝第2試合より登場。18日の準々決勝を勝ち抜いたクボタスピアーズ船橋・東京ベイとぶつかる。第17節で対戦時に29-29と引き分けた強豪と、決着をつけたい。