奇抜ヘアで好突進。タウファ・ラトゥ、2連覇期待のブレイブルーパスで躍動する。

モヒカン刈りにした。
タウファ・ラトゥ。東芝ブレイブルーパス東京所属の27歳だ。
東京・秩父宮ラグビー場で話したのは5月10日。加盟するリーグワン1部の最終節で、横浜キヤノンイーグルスを49-28で倒した直後のことだった。
「ジョー・マーラーみたいに、と」
引退したばかりの元イングランド代表の左PRは、側頭部とこめかみを刈り上げているので知られていた。
2週間が経つと、タウファはよりマーラーに近づいていた。トップを金に染めたのだ。
府中市内の拠点での練習をした22日、カラーリングの理由を聞かれると「皆がやってみろと言うので、こうしました。チームマンなので」と笑った。
日本代表87キャップのリーチ マイケル主将ら複数のチームメイトに勧められたようだ。
「最初にモヒカンにしてみたら、今度は金髪にしろと。ジェイコブ・ピアスさん、ワーナー・ディアンズ、リーチさん、ノニー(シャノン・フリゼル)…。それぞれが『もっと怖く見せよう』とアイデアを出してきたんです」
身長183センチ、体重120キロ。スクラム最前列の右PRを担う。
母国トンガではおもにBKのCTBで突進力を活かし、スカウトされて進んだ日本の白鷗大でもしばらく同じ位置を担った。
ただし来日後は「ご飯が美味しくて…」と、徐々に身体が大きくなっていた。
「青森出身の同期がいて、地元に戻るたびにお米を持ってきてくれていました」
大学には5年目前期にも在籍していて、その頃は現地クラブの宇都宮ヴォルツで右PRを務めていた。
大学でコーチをしていた元日本代表PRの猪瀬佑太を通じ、ブレイブルーパスの練習を体験できたのは’22年3月。採用として現日本代表で副将の原田衛らを獲得した望月雄太氏の計らいがあったからだ。8月、契約できた。
「(入団に向けたテストは)数カ月にわたって何回か。その間、(経験が求められる)スクラムに関して勉強もしました」
昨季のリーグワンを制した名門は、「年配者が若手の意見を聞く。穏やかな雰囲気」。リーチ、三上正貴、森太志といった10歳年上のFWに面倒を見てもらってきた。
「リーチにはオン・ザ・フィールド、オフ・ザ・フィールドの両方で様々に教えてくれて、三上さんと森さんにはスクラムについて助言をもらってきました」
もっとも、主力となるのは簡単ではなかった。加入初年度から出番はリザーブ主体で、今季序盤はメンバーから漏れることも増えた。ヘッドコーチのトッド・ブラックアダーに刺激を注入されたのは、ちょうどそのタイミングだった。
「もっと努力して取り組むようにと告げられました。特に何かというわけではなく、ラグビーにおける自分のよい部分を表現するようにしました。練習後は個人でエクストラトレーニングを。ランニングは特に。コンタクトにも注力しました」
努力は実りつつある。終盤に差し掛かると5戦連続で先発。持ち前のハードな突進、タックルを披露しつつ、満足しない。
「スタートで出られるのは嬉しいし、毎試合ステップアップできていると感じます。ただ、課題はあります。ボールがないところでのハードワークは、もっとよくできると思います」
経験値が求められるスクラムでは、最前列へ並ぶ同世代の星と協働する。
反対側にあたる左PRの木村星南、中央で統率するHOの原田は、ラトゥより1学年下もジャパン選出歴を持つ。
まず原田はこうだ。
「(タウファは)ちゃんと組めばフィジカルで前に押して行ける。日本の相手はタウファより(身体の高さ、姿勢が)低い。そんななかでもタウファが組みやすいように、ギャップ(向こう側との間合い)はコントロールしていきたい」
木村は「身体の重さがある分、ヒットで(対面の繋がりを)崩せるのがタウファの強み。タウファが崩したところへ、僕たちがついていくように。(塊の中で)タウファを1人にしてはいけないし、僕も1人になってはいけない。しっかり3人で…」。こう添える。
「3番(右PR)に移って数年であのクオリティなのは、凄いことだと思います」
これから始まるのはプレーオフ。リーグワン2連覇のかかるノックアウトステージへ、24日の準決勝から登場する。準々決勝を通過したコベルコ神戸スティーラーズとのバトルを前に、愛されるモヒカンの戦士は述べる。
「まずは今週、ベストを尽くします。ミーティングでもよく確認します。先々のことを考えるな、次の試合が決勝なのだと。ラインアウト、スクラム、ゲームプランの細かい部分を完璧にやりたい」
取材は通訳を介するが、日常会話程度の日本語は理解できるらしい。
