D-Rocksの藤村琉士は「残された時間を、いい時間に」。入替戦へ堂々。

5月9日、東京・秩父宮ラグビー場。夜の雨を浴びた藤村琉士は言う。
「しっかり勝って、形よく終わりたいなと」
リーグワン1部の浦安D-Rocksの一員として、レギュラーシーズンの最終節に後半14分から登場した。最前列中央のHOに入った。
12チーム中最下位であること、下部との入替戦に行くことは戦前より決まっていた。
もっとも「個人的にも、チーム的にも、後を考えずにこの試合だけにフォーカスしました」と藤村。自身は激しくコンタクトし、スクラムを安定させた。特に後者では、仲間同士で相手との間合いを意識できたのがよかったという。
「フロントローの3人、3人の6人(先発、リザーブ)でしっかり(目指すパックを)作れたのでよかったです」
対する三菱重工相模原ダイナボアーズの右PRには、南アフリカ出身のスクラメイジャーであるクフチャ・ムチュヌがいたが…。
「力があるので警戒しました。でも、(必要以上に)大きく見ずに、自分たちのスクラムにフォーカス。やるべきことだけをやる。それがうまくいった」
結局、今季3勝目を手にした。キックオフ前から9位だったダイナボアーズを、34-21で下した。今後の課題を述べる。
「細かいところ——例えばオフサイドをしないといった規律のところ、しっかり全員でアタックラインに下がってランナーになる、ブレイクダウンで相手をキル(排除)する——を、どれだけできるかが勝利の鍵になってくる。プレッシャーも感じますけど、とにかく自分たちにフォーカスしていくべきです」
身長174センチ、体重102キロの26歳。地元の山科ラグビースクール、勧修中、京都成章高を経て上京し、2020年度は出身の日大で船頭役を担った。
いまいるチームの前身であるNTTコミュニケーションズシャイニングアークス東京ベイ浦安の門を叩いたのは、’21年のことだ。社会人4季目の今シーズンは、一時ゲーム主将を託された。
クラブにとり昇格1年目となる1部のステージで、重責を担った。
「僕は言葉で喋るタイプじゃない。行動で見せる。誰よりもそれを徹底しています」
リーグの規定もあり、移籍を希望したり、退団を言い渡されたりする仲間がいることは、終盤戦に突入するまでに共有していた。集団のパフォーマンスにも影響を与えうるこの件にも、藤村は堂々と向き合う。
「この時期はやっぱり、出会いもあれば、別れもある。でも、いまは(全選手が同じ)チームなので。これからラグビーを辞める人だっている。残された時間を、いい時間にしたい」
24日からの入替戦では、2部首位の豊田自動織機シャトルズ愛知と2連戦をおこなう。今年度の最後を締めくくるデスマッチを「いい思い出」にしたい。