日本代表 2025.04.26

【サクラフィフティーン】今までで一番良い準備ができている。レスリー・マッケンジーHC

[ 編集部 ]
【サクラフィフティーン】今までで一番良い準備ができている。レスリー・マッケンジーHC
2019年より現職に就くレスリー・マッケンジーHC(撮影:上野弘明)

 コロナ禍の影響で開催が1年延期されたため、W杯NZ大会は2022年におこなわれた。つまり、2025年のイングランド大会までの準備期間は通常の4年よりも1年短い。
 しかし、その短い期間でもサクラフィフティーンが成長を遂げているのは確かだ。

 2024年は結果こそ振るわなかったが、全敗のWXV2では3試合とも10点差以内の惜敗。特に世界ランキングで4つ上で7位のスコットランド戦では、前年の大敗(7-38)から6点差(13-19)まで追い込めた。

 レスリー・マッケンジーHCはこう振り返る。
「結果に対してはどうしてもフラストレーションが溜まるけど、W杯を見据えたときに3試合連続でしっかりとしたパフォーマンスをわれわれが出せたのは大きい。だからタイトなゲームができたと思っています。選手たちがスコッドとして成長するために費やしたエフォートはしっかりと認めたい」

 看板の粘り強いディフェンスだけでなく、新たな武器も通用していた。
 レスリーHCは昨年、新たなFWコーチを招聘した。トンガ代表やプレミアシップのバース、ブリストル、スーパーラグビーのレベルズ、日本でもサントリーでの指導経験を持つマーク・ベイクウェル氏だ。

 同コーチのもとでセットプレーをテコ入れするため、昨春には計6週間に渡るFWだけ(+SH)のキャンプを初めて実施。ムーブやサインを一新し、長年の課題だったラインアウトの獲得率は飛躍的に向上した。

 重量では大きく劣るスクラムでも安定した試合が増え、モールは得点力不足に悩む日本代表の得点源となった(3試合で挙げた8トライのうちモール起点が4本)。

「スコットランド、ウエールズ、南アフリカといったサイズが大きく、セットプレーにプライドを持っているようなチームに対しても、十分やり合い、競合できる力がつきました。
 スピードやフィットネス、スキルといった日本が強みとしてきたものは、世界のラグビーも進化し、そこに大きなギャップはすでにありません。だからこそ、セットプレーはどんどん伸ばしていきたいと思っています」

▶新S&Cコーチへの期待。

 一方で、多くの得点機会を生みながら、何度もそれを手放した得点力不足は前回大会でも浮き彫りとなった継税的な課題だ。

「われわれは世界の中でも小柄ですし、パワーランナーがいるわけでもない。得点を重ねていくゲームモデルを描けるチームではありません。だからこそ、得点に変換できる機会を得たときは、確実に得点しないといけない。
 2年前は敵陣深くでラインアウトが取れなかったけど、いまはそれができる。よりドライビングモールをしっかりと使っていく必要があります。フィジカルがより向上すれば、その武器を尖らすことができると考えています。

 また、日本にはビッグガールが転がっているわけでもありません。いまいる選手たちを強靭な選手に作り上げていく必要がある。そのため、私たちはより経験値の高いS&Cコーチが必要だと判断しました」

 レスリーHCは「残りの期間は1秒も無駄にできない」とし、新たなヘッドS&Cコーチとしてオリー・リチャードソンを呼んだ(昨年11月から契約)。
 クボタ、レスター・タイガース、レッズでの指導歴があり、HCの求める「経験」は申し分ない。

「われわれはW杯に向けた準備の組み立て方を大切にしていきたい。日本のプログラムはどうしてもボリュームが多く、エフォートも十分だが、質はまだ曖昧な部分があった。
 どれだけ効率的に出し切れるかを目指していきたいので、オリーには各スタッフがやり過ぎず、やり足りないこともないように目を光らせてほしいと伝えています」

 2025年のサクラフィフティーンの活動は3月2日から始まった。
 まず2週間の合宿を2度実施する。

 そこには早速、オリーコーチの考えが反映された。
 それまでは前日の夜まで明かされなかったメニューも、今合宿からはすべてのスケジュールを公開。時間を上手く使い、ベストなコンディションで臨めるようにという狙いがある。

 また、オフの日をしっかり与えながら、量をこなす日と質を求める日の切り替えをハッキリとさせている。

「例えば今日であればユニットの練習やジム、室内トレーニングなどボリュームの多い日ですが、昨日は練習量が減る代わりにスピードやクオリティを追い求めることがメインでした(翌日はオフ)。中強度レベルで繰り返さないように、選手たちには日々のトレーニングに差があること、その意図を理解してほしいと思っています。

 最初の2週間は再導入といったイメージです。15人制のロード(負荷)に慣れてもらう。W杯に向かう中では準備万端で臨まない限り、すべてがタフな状況になる。大きなものを達成しなくてはいけないということをしっかり認識した上で、トレーニングに取り掛かる勇気が必要です」

 指揮官は同コーチに、もう一つの役割も期待している。
 アシスタントS&Cコーチとして入閣している元日本代表の谷口令子の教育だ。

 HCの最大の役割である「テストマッチでの勝利」を越え、壮大な絵を描いていた。

「もちろん自分の仕事はテストマッチに勝つことです。でも、代表チームのコーチとしての役割は、自分たちのブログラムをいかに発展させていくか、いかにベストな形にするかを考えていくことも含まれていると思っています。

 われわれ女性がラグビー界で活躍するため、女子ラグビーを発展させるためには、女性のコーチの能力を伸ばすことも大事な要素です。日本は特にこの領域が世界に遅れをとっています。

 コンタクトのコンディショニング、いかに壊れない体を作っていくかは、サイズが劣っているわれわれにとっても必要不可欠ですし、オリーが得意としている領域です。それを谷口本人にも伝えることで、強みにしてほしい。

 谷口はいま現役の選手たちにとって、次のキャリアでどう女子ラグビーに貢献するのか、影響を与えられるのかを体現していく貴重な存在だと思っています」

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