国内 2025.03.31

高校生レフリー、卒業。延原梨輝翔[京都成章→追手門学院大]

[ 明石尚之 ]
高校生レフリー、卒業。延原梨輝翔[京都成章→追手門学院大]
2月末は秩父宮ラグビー場でリーグワンのアシスタントレフリーを担った。京都までの帰り際に東京駅でパシャり(撮影:BBM)

 これまでは試合会場に制服で向かっていたけれど、それも見納めである。

 レフリーの延原梨輝翔(のぶはら・りきと)が、3月で京都成章高校を卒業した。

 自分の行動に、たくさんの「初」がついた3年間を過ごした。

 2年前に高校生で初めて花園(全国高校大会/1回戦)で笛を吹き、今年は桐蔭学園と國學院栃木の準決勝を担当した。

「準決勝という大きな舞台を任せてもらえたのは、素直に嬉しかったです」

 インタビューに同席した、元A級レフリーで現在はリーグワンでTMO(テレビジョンマッチオフィシャル)やCMO(コーチオブマッチオフィシャル)を務める木村陽介さんは、「高校生ですが堂々と、飄々と吹いていると感じます。これからも色々な経験を重ねてもらい、いずれはレフリーの中心になっていくと期待しています」と最大限の賛辞を送る。

 レフリーに憧れを抱いたのは、小学6年の頃と早かった。
 どの試合かは覚えていないが、「ひとりだけユニフォームが違う。それがカッコよかった」。

 実際に初めて笛を手にしたのは中学3年時。同級生同士の練習試合に、自ら立候補してレフリーを務めた。

 京都成章への入学までは、埼玉ワイルドナイツに所属する兄・秀飛と同じ道を辿った。
 はじめは選手とレフリーを両立するも、1年の終わりからレフリーに専念すると決めた。

「憧れから始まり、実際にやってみたらプレイヤーよりも面白かった」

 2年の6月にはB級レフリーに。”花園出場”の資格を手にした。

 誰も歩んだことのない道を歩んでいることは「嬉しいですし、(期待されている分)やらなあかんなとは思いますけど、プレッシャーはあまり感じていない」と話す。
 年の離れた大人たちばかりのレフリー界隈で、物怖じすることもないという。

 高校生らしからぬ堂々としたレフリングは、この性格からくるのだろう。

 高校生活を振り返り、「マジであっという間でした」と相好を崩した。
「今週はここに行って、来週はあそこに行って…というのを繰り返していたら一瞬でした」

 北は北海道、西は福岡まで。カテゴリーに関係なく、毎週末は各地のグラウンドに向かった。
 帰り際にご当地のラーメンを食べたり、お土産の買うのもまた一興。

「普通の高校生であれば経験できないだろうなと思いながら過ごしました。高校生ではトップレベルで新幹線に乗った自信はあります」

 その移動のために、レフリーに専念すると決めてからは寮を出た。実家の岡山から母が来てくれ、駅から近い場所に住んだ。「親には感謝ですね」。

 高校生らしからぬ多忙な日々を過ごしたが、「楽しいです。暇よりも忙しい方がいいじゃないですか」と笑う。

「年末は27日に新幹線で移動して、泊まって、 28日にリーグワンの旗を振って、泊まって、29日も旗を振って、新幹線で戻って、泊まって、30日は花園(2回戦)で笛を吹きました。しんどかったですね」

 花園の前はリーグワンのプレシーズンマッチをよく吹いた。
 リーグ開幕後はアシスタントレフリーとして多くの試合で旗を振っている。

「高校生とはスピード感も違うし、(思わず)うまっ!ってなります」

 2年からは海外でのレフリー経験も積めた。夢に掲げる「W杯のマッチオフィシャル」に向けては英語力が必須だ。

 マレーシアで「アジアラグビーU18セブンズ大会」、シンガポールで「シンガポールクリケットセブンズ」でマッチオフィシャルを担った。サニックスワールドユースで海外勢同士の試合を担当したこともある。

 そうした機会を早い段階で享受され、ステップアップを実感する。
「去年よりかは上手になったと思います。どういうところがと言われると難しいのですが…」

 日々、スキルの向上には余念がない。試合の振り返りはAMSと呼ばれる映像解析アプリなどを駆使して入念におこなう。
 担当コーチである大槻卓さん(2024年7月より日本協会ハイパフォーマンス部門審判グループマッチオフィシャルコーディネーター)とも頻繁に電話を繋ぎ、フィードバックをもらう。

「別に触れなくてもよかった場面で触れてしまったな、とか。ここは変に目立ったり、流れを崩してしまったな、とか…。年々、気づくことが増えるというか、永遠に(改善点が)見つかるんですよね」

 直帰の目標は、A級取得者のみが吹けるリーグワンのマッチオフィシャル。
 4月からスポーツ推薦で進学する追手門学院大での学生生活のうちに、その目標を達成したい。

 目指すレフリー像をこう語った。
「レフリーがいるか、いないか分からないくらい存在感の薄いレフリーになりたいです」

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