国内 2024.02.26

ラグビーに集中。7連勝のチームに勢いを与える。桑山淳生(東芝ブレイブルーパス東京)

[ 編集部 ]
ラグビーに集中。7連勝のチームに勢いを与える。桑山淳生(東芝ブレイブルーパス東京)
183センチ、90キロの26歳。兄・聖生もブレイブルーパス所属。©JRLO



 1万3581人のファンが見つめた2月24日の東芝ブレイブルーパス東京×横浜キヤノンイーグルス。
 27-7と狼たちが快勝した試合の立ち上がりを、イーグルスのSO田村優は「(先に)顔面パンチをくらい、みんな引いてしまった」と振り返った。

 フィジカルの強さで上回ったブレイブルーパスは、この日で開幕7連勝。15-0と前半をリードし、主導権を長く握り続けたのが勝因だ。

 その前半、チームにモメンタムを与えるプレーを何度もしたのが赤いジャージーの14番、桑山淳生(あつき)だった。
 今季開幕から全6試合に出場している好調さをこの日も発揮した。

 前半3分過ぎだった。相手の蹴ったキックをタッチラインの外で受けたSH杉山優平がクイックスローで受けたボールを受けると、迷いなく走り、ビッグゲインして敵陣深くに入った。
 最後は左に待つFL佐々木剛にロングパスを送って先制トライを呼んだ。

 15分過ぎには自陣でSOリッチー・モウンガのキックパスを受け、走った。ディフェンダーを振り切って約40メートル前進する。
 インサイドを走っていたCTBニコラス・マクカランにつないで5点を得た。

 27分過ぎ、左タッチライン際のスクラムから大きく展開されたボールを受けてインゴール右隅へ飛び込んだプレーは惜しかった。
右のつま先がタッチラインに触れてトライはキャンセルされたが、相手を制圧した前半の主役と言っていい働きだった。

 後半に入り、タックル時に頭部を強打。HIA(ヘッドインジュリー・アセスメント)で一時退場するも、10分後にピッチに戻ってからも集中力は途切れなかった。

 73分には、自陣深い地域でインターセプトしたマクカランの動きにすぐ反応してロングサポート。最後はCTBロブ・トンプソンのパスを受けて走り切ってトライを奪う。
 自身初のプレーヤー・オブ・ザ・マッチを受賞した。

 小3のときに鹿児島オールブラックスでラグビーを始め、鹿児島実業を卒業して早大へ。ブレイブルーパスへの加入は2020年の春だった。
 ルーキーイヤーにトップリーグで6試合に出場も、リーグワンの過去2シーズンは合計7戦の出場に終わる。昨季は開幕直前のケガで出遅れた。

 今季飛躍できている理由のひとつを本人は、昨季のオフの過ごし方にあるとみる。
 ピラティスに取り組んで動きの質を高めた。その成果がランニング能力と力強さの向上に直結しているように見える。

 チーム活動外の自分への投資が実を結んでいる。
 コンディション作りに時間をかけることができるようになったのは、昨年8月にプロ選手として活動できるようになったからだ。
 漠然とプロ転向を望むわけでなく、退路を断ってラグビーに集中したい気持ちをチーム上層部が理解してくれた。

 この日は、外にスペースがある前提で組み立てられた戦術の中で好プレーを繰り返した。
 アウトサイドから声をかけ続けて内側の選手たちの判断を助けた。
 その結果、いい形でボールがまわってきた。

 普段のトレーニングから、決断力を高める意識をしている。その成果も出た。
 モウンガのキックパスを受けてトライに結びつけたシーンも、冷静に状況を把握していたから生まれた。

 相手のWTBが下がっていた。防御ラインが内に寄っていたからコールをした。
「リッチーがドンピシャで蹴ってくれました。僕は取るだけでよかった」
 POM選出より、「チームとして準備してきたことを出して勝てて嬉しい」と話した。

 トッド・ブラックアダー ヘッドコーチは「ポテンシャルを一貫して出せるようになってきた」と桑山を評価する。
「自信を持ってプレーし、タフになった。まだ伸びる」

 開幕からの連勝を支えているものは、モウンガやFLシャノン・フリゼルら、オールブラックスたちの力が加わっただけではない。


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