日本ラグビーのトップランナーが語る聖地・秩父宮ラグビー場の未来。
新秩父宮ラグビー場着工イベント
新秩父宮ラグビー場着工イベント
日本ラグビーの聖地、秩父宮ラグビー場が生まれ変わる。新スタジアムは完全屋内の全天候型施設で、天候に関わらず快適なプレーと観戦が可能。超大型ビジョンや最新鋭の音響設備、多彩な席種と相まって、非日常の興奮と感動を体験できる特別な空間となる。その着工を記念し、2月12日には記念イベントが開催された。ここでは、秩父宮ラグビー場にゆかりの深いゲストによるトークセッションの模様をお届けする。
2月3日の新秩父宮ラグビー場整備事業の着工を記念して開催された本イベントは3部構成で実施され、第1部では事業者によるプロジェクト説明会がおこなわれた。
冒頭のあいさつでは、三井不動産株式会社の植田俊代表取締役社長が登壇。神宮外苑地区まちづくりについてこれまでの流れや今後の計画を解説し、「このまちづくりは次の100年、未来の世代へとつないでいく大切なバトンです。新しい秩父宮ラグビー場の着工は、その長いリレーの力強い第一歩になります」と高らかに宣言した。
その後は新秩父宮ラグビー場のコンセプトムービーが上映され、事業者が施設の詳細などを説明。スタジアムは2030年開業予定で完全屋内型となり、フィールドは人工芝、ラグビー開催時の収容人数は約1万5000人、年間60日以上の開催を見込むことなどが紹介された。なおトップパートナーは三井住友フィナンシャルグループで、秩父宮ラグビー場の名称と併用する副名称が「SMBC Olive SQUARE(オリーブスクエア)」に決まったことも発表された。
続く第2部では、元日本代表で現在はNECグリーンロケッツ東葛のアカデミーディレクターを務めている田中史朗氏、東芝ブレイブルーパス東京のPR三上正貴、WTBジョネ・ナイカブラ、ラグビージャーナリストの村上晃一氏をゲストに招き、トークセッションが催された。
当初出席予定だったブレイブルーパスのNO8リーチ マイケルは残念ながらコンディションの都合により欠席となったが、チームメイトのSOリッチー・モウンガ、FB松永拓朗とともにビデオメッセージで登場。「秩父宮ラグビー場は数えきれないほどたくさんの試合をしてきた思い出深い、大好きな場所です。ラグビーの魅力を多くの人に広げ、子どもから大人まで世代を超えて愛されるラグビー場になってほしいです」とエールを送った。
ラグビー実況でおなじみの矢野武アナウンサーの司会で進められたトークセッションは、出演者それぞれの秩父宮ラグビー場への思いが随所に表れる時間となった。
所属チームや日本代表で多くの試合を秩父宮ラグビー場で戦ってきた三上が思い出の一戦として挙げたのは、パナソニック ワイルドナイツが27−26で東芝ブレイブルーパスに勝利し優勝を果たした2016年1月のリクシルカップ決勝だ。「最後に僕らがトライをした後、ゴールキックが外れて優勝を譲った試合。悔しかったのをすごく覚えています」と語ると、当時パナソニックの一員だった田中氏が「あれ、本当は入っていたんですよ」と返答。蹴った瞬間の軌道はポールの間に向かっていたが、ゴール直前で風に流され1㍍ほど逸れたのだという。「秩父宮ラグビー場の神風が僕らに優勝させてくれました」と笑顔で振り返った。

その田中氏が印象に残るゲームと話したのは、2013年6月のウエールズ戦(23−8)。日本代表がティア1とのテストマッチで初めて勝利した試合だ。「みなさんは2015年の南アフリカ戦をよく話されますが、僕はあのウエールズ戦で自信をつけて、そこから上がっていった感覚があります。応援もすごくて、自分たちは日本の代表なんだとすごく感じた試合でした」。この試合には三上も1番で先発しており、「勝った瞬間、トシさん(廣瀬俊朗キャプテン)がキクさん(菊谷崇)に抱き上げられて、観客の皆さんが両手を上げて喜んでいるシーンが記憶に残っています」と話した。

報道する立場として秩父宮ラグビー場で数々の試合を観てきた村上氏は、そのウエールズ戦とともに歴史に残る名勝負を2つ選んだ。
「古くは1971年の9月に日本代表がイングランド代表に3−6と迫った試合。負けましたが、ラグビーの母国を相手にそれだけの好勝負をできるという日本ラグビーの力を世界に示した試合でした。自分が取材した試合では、1989年5月のスコットランド戦の勝利(28−24)。宿沢広朗監督、平尾誠二キャプテンの日本代表で、宿沢さんの胴上げがすごく印象的でした」

摂南大から2018年にブレイブルーパス入りしたナイカブラは、トップリーグデビュー戦が秩父宮ラグビー場での試合だった。印象に残っているのは観客席とピッチの距離感だそうで、「秩父宮ラグビー場は距離が近いので、ファンの声が聞こえてくる」とコメント。「時々、ヤジが飛んでくることもあります」と笑わせた。
日本でラグビー場と名のつくスタジアムは限られる。その特徴について、長年現場取材を続ける村上氏はこんな秘話も紹介した。
「昔は『ラグビー場はお風呂がひとつしかない』といわれていました。試合が終わったら両チームの選手が一緒にお風呂に入って、湯船に浸かりながら話をするものだ、と」
秩父宮ラグビー場もかつてはそうだったようで、田中氏が「初めは気まずさがありますが、少しずつ声をかけ合いながら仲よくなっていった」と語れば、三上は「試合でバチバチにやって、最後に一緒に汗を流すというのはすごくいい文化だと思う」。村上氏は新秩父宮ラグビー場について、「新しいスタジアムでお風呂が一つというのはないと思いますが(笑)、できれば両チームが試合後も交流できるようなスペースがあればうれしいですね」と提案した。
非日常の観戦体験に
高まる期待
新秩父宮ラグビー場の大きな特徴のひとつは、完全屋内の全天候型スタジアムとなることだ。この点については、「雨が降っても濡れずに観戦できるし、冬でもさほど寒くない。天候に左右されないのでプレーのクオリティも上がると思います」(村上氏)と肯定的な意見が続いた。
田中氏はNZのハイランダーズに所属していた際の本拠地が屋根付きのスタジアムだったこともあり、「雨の日は寒くて観にいけない、という声をよく聞いていました。ファンの方はより楽しく観戦できると思います」。南国フィジー出身のナイカブラも、「(日本の冬は)寒い。このスタジアムができたらすごくうれしいです」と歓迎した。
フィールドが人工芝になることもメリットが多いようだ。最前線でスクラムを支える三上は、天然芝に比べて滑りにくいことから「いいスクラムが組めると思うし、反則も減ると思います」と展望を口にする。キックを蹴る際に軸足が滑ることも減るし、よりスピードに乗りやすくなるという意見も聞かれた。
場内は東西スタンドを均等にした「ダブルメインスタンド」とともに、ゴール裏からフィールドと同じ高さで臨場感を味わえる「フィールドバー」などがある北側スタンドで三方から囲むレイアウトとなっており、南側に横50㍍、縦12㍍の大型ビジョンが設置される。最先端の音響や照明設備による効果も加わって、これまでにない多彩な演出が可能になるようだ。非日常の観戦体験は、多くのファンにラグビーの魅力をより深く伝えることにつながるだろう。
大いに盛り上がったトークセッションの後は、イベントの第3部として神宮外苑地区まちづくりが主催する「令和の献木プログラム」植樹セレモニーも新秩父宮ラグビー場の建設予定地内で実施された。こちらには田中氏、三上に加え、徒歩数分の距離にある青山高校のラグビー部員が参加。神宮外苑地区のまちづくりの次の100年に向けたキックオフに立ち会った田中氏は、その心境をこう表現した。
「僕は今の秩父宮ラグビー場でしかプレーしていないので寂しい思いがありましたが、今回いろんなイメージを見せていただいて、新秩父宮ラグビー場のファンになりました。このスタジアムでラグビーが見られると思うとワクワクするし、ファンの方にとっても最高の場所になると思う。まちと人がつながりながら、次の100年でさらに進化していって、日本を盛り上げてほしい」
日本ラグビーの新しい聖地、新秩父宮ラグビー場。2030年の開業を楽しみに待ちたい。
田中史朗
PROFILE◎たなか・ふみあき/1985年1月3日生まれ。元日本代表。現役時代はSH。日本代表キャップ75

三上正貴
PROFILE◎みかみ・まさたか/1988年6月4日生まれ。PR。東芝ブレイブルーパス東京。日本代表キャップ35

ジョネ・ナイカブラ
PROFILE◎JONE NAIKABULA/1994年4月12日生まれ。WTB。東芝ブレイブルーパス東京。日本代表キャップ17

村上晃一
PROFILE◎むらかみ・こういち/1965年3月1日生まれ。ラグビージャーナリスト


新秩父宮ラグビー場の魅力

① 熱狂できるプレー環境

秩父宮ラグビー場の精神を継承したフィールドと観客席の圧倒的な近さはそのままに、“ダブルメインスタンド”に包まれ、一体感と高揚感、臨場感を生み出す全天候型スタジアム。
② 快適で多彩な観戦環境

50㍍×12㍍の大型ビジョンや、ストレスフリーな座席計画などにより快適な観戦体験が楽しめる。コーナー部から観戦する「ラグビータワー」、選手と同じ目線で楽しむ「フィールドバー」を始めとした多彩な観戦環境を提供。
③ 緑に囲まれたにぎわいの空間

既存の樹木を最大限生かしながら、外構に国立競技場の緑道と融合した緑あふれる歩行空間を整備。
※「新秩父宮ラグビー場」は現時点での仮称となります
※「SMBC Olive SQUARE」という名称は2030年5月(予定)の施設運営開始日より効力発生となります。
※掲載されているイメージは、今後の検討・協議により、計画内容が変更となる場合があります。



