アメリカンフットボール好きだった父の夢を追う。ウエールズ代表WTBルイス・リース=ザミットがNFL挑戦
ダイナミックな走りをもう見られないと思うと寂しい。
一方で、あのランニングスキルにアメリカンフットボールのファンが熱狂する光景を見たい気もする。
ウエールズ代表のWTB、ルイス・リース=ザミットがNFL(ナショナル・フットボール・リーグ)に挑戦する決断をした(1月16日)。
2024年のシックスネーションズの各国スコッドが発表されたこの時期。多くの人の関心は、若きウインガーの踏み出す新しい道に寄せられた。
22歳ながら、すでに32キャップ。先のW杯での5トライを含むテストマッチ通算14トライの好ランナーは、自身の思いを、ウエールズ代表発表直前のタイミングで周囲に伝えた。
ウォーレン・ガットランド ヘッドコーチがスコッドを発表する直前のことだった。
リース=ザミットはアメリカンフットボールへ挑戦する理由について、所属するグロスター(英・プレミアシップ)のインタビューに答え、「アメリカンフットボール好きの父の影響」と答えている。
「父はアメリカンフットボールをやっていて、幼い頃から私を、NFLの大ファンに育ててくれた。その思いを継ぎたい。年齢的にも、新しいスポーツを始めるには今が絶好のタイミングだと思う」と話している。
リース=ザミットは才能に恵まれた選手だ。191センチ、95キロの体躯を誇り、ダイナミックに走る。
若い頃から活躍。グロスターのアカデミーに在籍し、18歳と70日でプレミアシップデビューを果たした。
U18ウエールズ代表を経て、19歳でウエールズ代表に選出。2020年10月のフランス戦でテストマッチにデビューした。
2021年にはブリティッシュ&アイリッシュ・ライオンズに選出。そのときは20歳で、南アフリカツアーに参加した。
今回のリース=ザミットの挑戦は、NFLインターナショナル・プレーヤー・パスウェイ(IPP)への招待を受けた形で実現した。
同プログラムは2017年に始まった。世界中のアスリートたちに、NFLレベルで競い、スキルを向上させる機会を与え、最終的に、NFLのロースター入りのチャンスを提供するものだ。
選手たちは1月下旬から10週間にわたってアメリカ(フロリダ)でトレーニングをおこなう。
NFL各クラブのスカウト担当者へ、自身の力をアピールする機会が与えられる。
リース=ザミットも、「金曜日(1月19日)にフロリダに飛ぶ。10週間の終わりに、自分に十分な実力があるかどうか、チームが自分を必要としているかどうかを見極める。夢を現実にしたい」と話している。
ワールドラグビーも『X』(旧Twitter)で最近NFLへ挑戦した数人の選手たちを紹介し、リース=ザミットの将来を見守っている。
セブンズのアメリカ代表として活躍し、2016年のリオ五輪にも出場したネイト・エブナー(ニューイングランド・ペイトリオッツ、ニューヨーク・ジャイアンツで活躍し、スーパーボウルの優勝リングを3つ獲得)が、最大の成功者か。
イングランド代表、同セブンズ代表として活躍し、現在はラシン92でユニオンに復帰したクリスチャン・ウェイド(バッファロー・ビルズ)の例もある。
元イングランド セブンズ代表のアレックス・グレイ(アトランタ・ファルコンズ)、アメリカ代表として2011年と2015年のW杯に出場したヘイデン・スミス(ニューヨーク・ジェッツ)も、かつてのチャレンジャーだ。
レッドドラゴンの一員になる夢は叶えた。
幼い頃から抱いてきたもうひとつの夢、アメリカンドリームは、プロアスリートとしての最高到達点とも言えるもの。
明るい将来へ続いていた道から外れ、全力で追いかける価値はある。