各国代表 2024.01.19

セブンズで不在のデュポンに代わり、主将はNO8アルドリット。シックスネーションズのフランス代表発表

[ 福本美由紀 ]
セブンズで不在のデュポンに代わり、主将はNO8アルドリット。シックスネーションズのフランス代表発表
英語も堪能なNO8グレゴリー・アルドリットが主将に就いた。(撮影/松本かおり)



 今年のシックスネーションズ開幕まで3週間を切り、今週は各国代表のメンバーが発表された。

 フランス代表は、4年前にガルチエ体制になってから42名の選手を招集して合宿をおこなってきたが、今回から34名に変更された(1月17日発表)。

 シックスネーションズの期間中もトップ14は進行しており、クラブも選手を必要としている。この4年間は代表チームが自国開催のワールドカップ(以下、W杯)で初優勝するという目標を達成できるように、クラブも協力して選手を代表チームに提供してきた。
 しかしW杯を終え、新たな4年をスタートする前にクラブ側から「これ以上は譲れない」と声があがったのだ。

「この4年間代表チームに与えて、与えて、与え続けてきた。これからも与えていく。でもクラブを弱体化させるわけにはいかない」とトゥーロンのピエール・ミニョニヘッドコーチ(以下、HC)は訴える。

「4年間、代表チームの要求はすべて受け入れられた。クラブは100パーセント役割を果たした」と言うのは、33名のフランス代表W杯スコッドに10名の選手を輩出したトゥールーズのユーゴ・モラHCである。

「42名の代表リストの85〜90パーセントは5つのクラブに集中している。代表合宿に召集されるメンバーが34人になればその割合はさらに高くなるだろう。影響を受けるクラブは苦しい状況に陥る。特に難しいのは選手のフィジカル面、メンタル面での疲労回復だ」とさらに続けた。

 トゥールーズのようにトップ14とチャンピオンズカップの両方でタイトルを目指しているクラブは最大で37試合を消化しなければならない。メンバーをローテーションさせながら選手の心身の健康を守りたいが、シックスネーションズの約2か月間、10人もの選手が不在になるとクラブに残っている選手が連戦することになる。
 シックスネーションズが終わると代表選手は疲れて帰ってくる。クラブに残って戦っていた選手も疲弊している。

 代表チーム召集期間中、選手の給料を支払っているクラブに対して、代表選手1人につき1日1700ユーロ(約27万4150円)の補償金が協会から支払われているが、お金の問題だけではないのだ。

 合宿メンバーを34名にした上で、代表スタッフは木曜日に強度を高めたゲーム形式の練習をおこなった後、6名の選手をその週末のトップ14の試合に出場できるようにクラブに返すことを提案したが、クラブも週末の試合に備えるために木曜日に出場メンバーで練習がしたい。

 そこで折衷案として出されたのが、水曜日に6人の選手をクラブに返し、木曜日の朝、34人のリストに最も少ない10のクラブから6人を、それぞれ異なるクラブから召集する、しかも代表チームは毎回同じ選手にならないように選ぶという方法だ。激しい攻防のあとが感じられる。

 1月に『レキップ』紙へのインタビューでファビアン・ガルチエHCは「4年間この世代と強化に取り組んできた。1点差で敗れた南アフリカ戦(28-29、W杯準々決勝)はこの世代の成長に必要不可欠な要素であり、さらに集団的経験値を積むことができた。このグループの80〜90パーセントが2027年のW杯に行くことになるだろう。代表選手が成長するには、しっかりとした集団的経験値を重ねながら8年という期間が理想的」と言っていたように、今回発表されたメンバーに大きな変更はない。しかし、いくつかサプライズもある。

フランスラグビーの『X』より

 キャプテンを務めていたアントワンヌ・デュポンが7人制でオリンピック出場を目指すため、今大会は不在となる。この世代の最初のキャプテンで、これまでもデュポンの不在時にキャプテンを務めていたシャルル・オリヴォンがキャプテンになるだろうと予想されていたが、2か月の休暇から復帰したばかりのグレゴリー・アルドリットが任命された。

 アルドリットは8月のW杯準備試合のフィジー戦でもキャプテンを務めた。
 4年後、オリヴォンは34歳、アルドリットは30歳。またスコットランド人の父を持つアルドリットは英語が堪能であることから、レフリーとのコミュニケーションも考慮されたのではないだろうか。

 また、LOチボー・フラマンが負傷で開幕のアイルランド戦は欠場する。代わって召集されたのが2019年W杯を最後に代表から遠ざかっていたポール・ガブリヤーグ(30歳)だ。

 代表メンバー入りを期待されてきたトゥールーズのLOエマニュエル・メアフーが、昨年11月末に5年の居住期間を満たし、満を持しての初招集だ。ただ、W杯は負傷で欠場となったが、このチームで背番号「5」をつけてきたポール・ヴィレムセの名前がない。
 右LOはロマン・タオフィフェヌアが代表引退宣言を撤回し今回もメンバーに入っているが、彼はフィニッシャーとしての出場が多い。メアフーがアイルランド戦でスタメン初キャップとなるのだろうか。

 もう1人LOで初招集されたのが、トゥーロンのマチアス・アラガユ(22歳)だ。
 W杯ジョーカーでトゥーロンに4か月在籍した元ウエールズ代表キャプテンのアラン=ウィン・ジョーンズが「彼はフランス代表になる」とお墨付きを与えた若手だ。
 今大会で出場機会がなくても、合宿に参加することで今年の夏のアルゼンチン遠征に向けての準備になるだろう。

 一方、予想されていた通り、トップ14でもチャンピオンズカップでも今ノリに乗っているボルドーのBK陣が名を連ねる。
 リュキュ、ジャリベール、プノー、モエファナ、ビエル=ビアレのW杯のイタリア戦後半のメンバーに、昨年U20大会での優勝メンバーのCTBニコラ・デュポルテル(21歳)が加わった。チーム・ボルドーの息のあったスピーディーに展開するラグビーが代表でも見られるだろうか?

 今年もまたヨーロッパの熱い冬の闘いが始まる。


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