【ラグリパWest】若きリーダー。射場大輔 [レッドハリケーンズ大阪/副将 CTB]
強面。こわもて。
格闘的なラグビーにはもってこいか。
逆に子供のようになる時もある。笑顔はにかむ。話すと柔らかく、論理的でもある。
そのギャップが射場(いば)大輔の魅力。レッドハリケーンズ大阪の副将である。26歳と若きリーダー。ポジションはCTBに入る。177センチ、93キロの体は力強い。
チームはリーグワンのディビジョン2(二部)に上がり、戦う。主将は杉下暢(とおる)。5歳上のLOを射場は支えてゆく。
現場トップのGMである高野一成は射場の抜擢理由を説明する。
「リーダーに必要な情熱があることです」
その熱は仕事でも放射されている。レッドハリケーンズ大阪はそのメンバーほとんどが社員選手だ。射場はドコモCS関西のコンタクト事業部で働いている。
「仕事はコールセンターの統括。派遣社員の方たちのモチベーション向上です。どうやったら仕事を続けてもらえるか考え、いい対応をした方の表彰などもしています」
職場で人をひとつに束ねるには情熱を中央に置き、目配り、気配り、思いやり。それはそのままラグビーに生きる。
射場にはチームとしての業務もある。レッドハリケーンズ大阪は大阪市を構成する区の振興に寄与する。「区民アンバサダー」として連携協定を結び、ラグビー教室などを開催する。協定締結は練習グラウンドのある住之江など15区に及ぶ。市内には24の区がある。
「選手自らが、区の担当者にアポを取って、会いに行きます。チームの認知度を上げる狙いもありますが、ラグビーの普及や発展につながります。いい取り組みだと思います」
この連携は他者とのコミュニケーション能力を向上させる。グラウンド上で必要なことが知らず知らずに磨かれる。段取りなどはビジネス・スキルのアップにもつながる。感謝も兼ね、公式戦ジャージーの背中には15の区がそれぞれプリントされている。
射場への期待はチームから送り出されたオーストラリア留学にも見て取れる。今年5月〜8月まで約3か月間、ブリスベンの古豪、ブラザーズに在籍。10試合を戦った。
「むこうの大きい選手たちと対戦して、フィジカルは上がっていると思います」
外国人との意思疎通の仕方も学んだ。チームメイト5人と一軒家に暮らす。
この南半球での生活にも副将就任の理由がある。高野は振り返った。
「留学でさらに成長してくれました」
昨季はリーグワンのディビジョン3(三部)で12試合中10試合(先発5、入替5)に出場した。今季は同じCTBのトニシオ・バイフが相模原DBに移籍。シーズン前の5つの練習試合には4試合に先発した。
レッドハリケーンズ大阪につながる競技を始めたのは3歳の時だった。兵庫県ラグビースクールである。
「父の影響です」
父・真司は指導員である。現役時代は名の通ったFWだった。大阪の府立校、阪南から天理大、ワールド(現在は廃部)でプレーした。射場の強さはその父譲りである。
高校は常翔学園を選ぶ。ほかからも誘いがあったが、父の言葉が大きかった。
「コーダイから誘ってもらえるって、すごいことやと思うけどな」
父の高校時代、40年ほど前の校名は大阪工大高。すでに全国優勝を2度果たしていた。大阪の高校ラグビーと言えば、この紺に赤2本のジャージーだった。東海大仰星は創部したて、大阪桐蔭は学校創立の前である。
高3時には花園に出場する。95回大会(2015年度)は初戦となる2回戦敗退。天理に3−5だった。射場はCTBで先発した。
「父には、花園の出場回数は俺の方が多い、と自慢されます」
阪南は父の高2時から連続出場する。初出場の63回大会は1回戦敗退。本郷に4−18。次大会は2回戦で淀川工に10−10の抽選負け。父はLOでレギュラーだった。
大学は紫紺ジャージーの明治に進む。
「強い憧れがありました」
3年からCTBとして先発メンバーに名を連ねる。大学選手権は優勝と準優勝。55回大会(2018年度)の決勝は天理に22−17。56回大会のそれは早稲田に35−45だった。
射場の3年時からコーチになった伊藤宏明には、多くのことを学んだ。CTBからのキックのことをよく覚えている。
「SOがボールを持った時には相手のWTBは下がっている。ワンパスした段階で上がって来る。そのスペースに蹴り込む」
伊藤は現役時代、俊敏なSOだった。日本代表キャップ2をもっている。
大学卒業後は当時のNTTドコモに進んだ。
「3年の時から声をかけてもらえました」
神戸で生まれ育ち、高校は大阪。関西での生活になんら抵抗はない。そして、射場にとっての社会人ラグビーは4季目を迎える。
「目標は個人的には全試合出場すること。チームとしては、まずはトップ3に入って、入替戦に出場する。大阪のみなさんに喜んでもらえるようにしたいですね」
開幕戦は12月9日、九州KVとアウエーの「博多の森」で対戦した。射場は13番、CTBで先発。杉下が欠場したため、ゲームキャプテンにもなった。試合前に話している。
「昨シーズンは3回やって3連勝しましたが、簡単に勝てる相手ではありません」
点差は4、9、2だった。
その苦手意識を振り切るように、試合終了間際、WTB小村健太のトライで26−22と劇的な開幕サヨナラ勝ちをもぎ取った。その直前のモールに射場も参加していた。
赤いジャージーのチームとともに射場の船出も順調である。