【WXV1】初代チャンピオンはイングランド。ブラックファーンズは力負け
今年から新しく始まった女子15人制ラグビーの国際大会、世界のトップクラスが集まるファーストグループ【WXV1】は、イングランドが開催国のニュージーランド(以下、NZ)代表、ブラックファーンズに33-12で勝利して初代チャンピオンとなった。
11月4日にオークランドでおこなわれた【WXV1】の最終戦は、優勝をかけてブラックファーンズがイングランドと戦った。
ブラックファーンズは、初戦フランス相手に17-18で敗れ黒星スタート。2戦目は、初戦の鬱憤を晴らすかのようにウエールズに70-7のビックスコアで勝利した。
一方のイングランドは、初戦オーストラリア相手に42-7、2戦目は、カナダ相手に45-12と2試合とも圧勝。オーストラリアがフランス相手に29-20のアプセット勝利を挙げた事により、ブラックファーンズにも優勝の可能性が再浮上した。
ブラックファーンズ×イングランドの戦いと言えば、昨年のワールドカップ(以下、W杯)決勝を思い出す。
イングランドが強力FWを武器に試合を有利に進めたが、ブラックファーンズが粘り死闘の末に34-31と勝利し、歴史に残る試合となった。
W杯決勝の再戦は、NZのスポーツニュースを賑わせ、再び激戦になる事が期待された。
試合は、イングランドの強力なFW陣を前にブラックファーンズが常に劣勢に立たされる展開が続いた。前半25分の時点で3トライを奪われ0-19と大きくリードされ、ブラックファーンズの表情は険しくなっていく。
この時点で試合が決まったかのように思えるくらいイングランドが圧倒していた。
しかし、前半の終了間際にブラックファーンズの昨年のW杯メンバーらが意地を見せる。
8番リアナ・ミカエレトゥは、再三見せる力強い突破で前に出る。そして15番レネ・ホームズ、14番ルビ・トゥイでボールを繋いでチャンスを作る。
最後は共同主将の7番ケネディー・サイモンがトライ。コンバージョンも決まり7-19で何とかイングランドにしがみつく形で前半が終了した。
◆後半ブラックファーンズに勢いつくも、イングランドは追撃許さず。
ブラックファーンズの後半の立ち上がりは、勢いがあった。
劣勢だったスクラムを改善すべく早い段階でPRクリスタル・マリー、HOルカ・コーナーのインパクトプレーヤーを投入した。昨年のW杯同様にピッチに入ってすぐに効果が表れた。
まずは、スクラムの安定に成功した。
その後、ラインアウトからサインプレーが見事に決まり、途中出場のWTBケイトリン・ヴァハアコロが左隅にトライを決めて12-19と7点差に迫る(48分)
このトライでブラックファーンズが完全に流れを引き寄せたかに思えた。しかし、2個目のトライ以降は、なかなか良い攻撃を継続させてもらえなかった。
その後、勢いを取り戻したイングランドは、強みのFWに持ち込む。ブラックファーンズのディフェンスは、簡単にこじ開けられトライを奪われ12-26と再び突き放された(55分)
再びエンジン全開となったイングランド。スクラムでも再度優勢になり、試合を有利に進めた。しかしブラックファーンズも必死に対抗し昨年のW杯決勝で見せた激しいフィジカルバトルが続く。女子ラグビーの次元を超えていると言っていいくらい凄まじい激しさだった。
FW戦で体力の消耗が見えたブラックファーンズは、残り10分で1トライを追加された。万事休す。そう思わせるトライだった。(12-33)
試合は決まったものの、昨年のW杯チャンピオンのブラックファーンズは、最後まであきらめず果敢に攻める。
しかし、イングランドの激しいディフェンスを前にたまらずミスを犯してしまう。こんな展開が続いた後に試合終了のホイッスルが鳴った。
一試合を通じてイングランドの強いFW陣がブラックファーンズを苦しめ勝利に結びつけた。この結果によりイングランドは昨年のW杯決勝のリベンジに成功。そしてWXV1初代チャンピオンに輝いた。
内容は、圧倒的にイングランドが上だった。
スクラム、ラインアウトのセットピースの安定感はもちろんの事、ブレイクダウン、そしてモール攻撃は、抜群に良かった。
昨年のW杯決勝は、イングランドが早い時間帯にレッドカードで数的不利になっていた。しかし、今回の対戦は、数的不利はなかったため、実力差がはっきりと見えた気がする。
イングランドが世界ランキング1位に相応しいパフォーマンスを見せた大会と言えるだろう。
敗れたブラックファーンズは、格下相手にはミスが少なくスキルフルなラグビーが出来るものの、フランス、イングランドの試合では、プレッシャーを受けた時にミスが多発した。
FLサラ・ヒリニ、CTBステイシー・ワカ(フルーラー)、CTBテレサ・フィッツパトリック、WTBポーシャ—・ウッドマンと言ったセブンズの選手たちの不在、そして昨年で引退したレジェンドのケンドラ・コックセッジ(SH)ら、経験豊富な選手が抜けた穴を埋め切れてない印象だった。
試合後のインタビューでブラックファーンズの共同キャプテン、SOルアヘイ・デマントは、「チームとしてだけでなく、個人としても、これは素晴らしい学びの機会。多くの選手がイングランドのようなチームと対戦したことがない。それこそがこの大会の目的でした」と語った。
WXV1の最終順位は、1位イングランド(15P)。2位カナダ(10P)。3位オーストラリア(10P)、4位ニュージーランド(6P)、5位フランス(4P)、6位ウエールズ(1P)となっている。
1勝2敗のブラックファーンズは、パシフィック4シリーズで問題なく勝利したカナダとオーストラリア(共に2勝1敗)がフランスに勝利した事により4位で終了となった。
今年から若い選手たちが新しく代表入りしてきていている。今回の経験を活かして、成長していく姿を期待している。