【RWC2023】オールブラックスが開幕戦のメンバーを発表。フランスの強力FWとの勝負が勝利のカギ

　いよいよ4年に1度のラグビーの祭典、ラグビーワールドカップ2023（RWC2023）が開催国のフランスで9月8日（現地時間）から開幕する！
　RWC最多タイ、3回優勝（1987, 2011, 2015年）のニュージーランド（以下、NZ）代表 、オールブラックス は2大会ぶり4度目の優勝を目指す。

　これまでのRWCでは、オールブラックスの名前が毎回必ず優勝候補の本命に挙がっていた。
　しかし近年の不振により今大会の優勝候補の本命は、アイルランド、フランスの声が多く、オールブラックスを推す声は以前ほど挙がらなかった。初めてチャレンジする立場になるオールブラックスの存在は他のチームにとっては不気味になるだろう。

◆開幕戦のオールブラックスのメンバー、注目はケガ人の代役

　プールAに入ったオールブラックスの初戦は、開催国のフランス。いきなりのビックカードでRWC2023がキックオフになる心憎い演出だ。

　開催国フランス時間の9月6日にオールブラックスのメンバーが発表された。
　指揮官イアン・フォスターHCは、ここまでほぼ毎試合メンバーを固定してRWCに向けて調整してきた。

　しかし、PRタイレル・ロマックス、LOブロディ・レタリック、FLシャノン・フリゼル、CTBジョーディ・バレットが大会前のテストマッチで負傷し、開幕戦を欠場する。
　今季主力選手として活躍をしていた4人の欠場は、プール戦での一番大事な試合だけに影響が気になる。ケガ人の代役が誰になるか注目されていた。

　PRロマックスの代わりには、長年右プロップとしてオールブラックスのスクラムを支えてきたネポ・ラウララが入った。安定したスクラムに期待がかかる。

　LOレタリックの代わりは、今季急成長を見せているスコット・バレットが背番号5を付けて出場する。レタリック、サム・ホワイトロックの大御所ふたりを上回るパフォーマンスを見せているだけに期待がかかる。
　タックル、ブレイクダウンと、コンタクトエリアでの規律の面で気になる点はあるが、それも含めた上で今大会でカギとなる選手になりそうだ。

　もっとも注目されていたFLフリゼルの代役には、オープンサイドフランカー（7番）が本職のダルトン・パパリィイを背番号6に抜擢した。8月25日に7-35で大敗した南アフリカ戦では、ケガのフリゼルの代役はルーク・ジェイコブソンだった。
　しかし若干のパワー不足がうかがえた。開幕戦はパパリィイにチャンスを与えた形になるか。ボールキャリーの良いパパリィイに期待が寄せられる。

　アーディー・サヴェアも現在はNO8がメインだが、以前は7番を主にしていた。FW第3列の3人すべてがオープンサイドFL経験者となったことも興味深い。

　CTBジョーディー・バレットの代役は、近年多く13番のリーコ・イオアネとコンビを組んでいたデイヴィッド・ハヴィリか、今季ケガから復帰のアントン・レイナート＝ブラウンになるか注目されていた。
　指揮官は、大舞台での経験のあるレイナート＝ブラウンに背番号12を託した。

　これら4選手は、本来スターティングメンバーに名前があってもおかしくない事から、逆に楽しみだ。

　控え選手に目を向けると、注目されていたSHのバックアップには、フィンレー・クリスティが入った。
　先日の南アフリカ戦で劣勢ながらも個人技でディフェンスをかわし、50メートル近くを走り切ってトライを取った新人のキャム・ロイガードが有力視されていた。しかし、開幕戦の大舞台では経験値が重要視された。

　SH以外のバックスのすべてのポジションでプレーできるハヴィリ、パワーが売りでCTB/WTBの両方をこなすレスター・ファインガヌクと、ユーティリティーの選手をバックスの控えに入れている。

　パワフルモンスターのHOサミソニ・タウケイアホもベンチに控えており、後半のインパクトに期待がかかる。

◆開幕戦を勝利するカギはFWのパフォーマンス

　近年のオールブラックスの不調の要因は、FWの劣勢が挙げられている。今季は、強くタフなFWが戻ってきた感がある。お陰で、持ち味の速い展開の攻撃が復活した。

　しかし先日の南アフリカ戦では、主力数人のケガ人の影響はあるものの、FWがフィジカルバトルで劣勢となって大差で敗戦した。
　カードを何枚かもらうなど、規律の面でも良くなかった。FWの劣勢によりボール支配率が落ちれば、自然と反則が増える事になる。勝利はFWのパフォーマンスがカギになる。

　完敗の南アフリカ戦では、基本のセットピース（スクラム、ラインアウト）も良くなかった。
　今回3番にラウララが入る事により、スクラムは改善されるだろう。ラインアウトは、今季好調のHOコーディー・テイラーがケガから復帰し先発メンバーに戻ってきたのは明るい材料だ。
　LOコンビもホワイトロック、バレットで、HOテイラーも含めてクルセイダーズのメンツになる。コンビネーションが良くなり、ラインアウトの改善も期待できそうだ。

　フランスのFWは強力だ。激しいバトル戦になるのは間違いない。
　仮にオールブラックスがFWで劣勢となれば、世界一のSHと言われるフランスの背番号9、アントワンヌ・デュポンに自由自在にプレーされる。
　そうなれば、勝利の天秤は大きくフランスに傾く。

　FWが有利になれば、デュポンにプレッシャーをかけられるだけでなく、オールブラックスの決定力のある両WTB、マーク・テレア、ウィル・ジョーダンを活かせることになり、勝機が見えてくる。
　今大会もSOリッチー・モウンガ、FBボーデン・バレットのダブル司令塔で挑むことも注目していきたい。

　オールブラックスは、RWCのプールステージでまだ負けたことがない。開幕戦でフランスがその歴史を変える可能性は十分にある。
　オールブラックスは、2年前にフランスの地で25-40と敗れたリベンジに燃えている。ガチンコ対決はとんでもない戦いになりそうだ。ワクワクする。