日本代表 2023.06.19

日本代表・具智元が振り返る完敗イングランド代表戦。スクラム改善の鍵は?

[ 向 風見也 ]
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日本代表・具智元が振り返る完敗イングランド代表戦。スクラム改善の鍵は?
日本代表の3番候補である具智元。W杯へ向け、合宿で鍛錬中(撮影:松本かおり)


 ラグビー日本代表が新兵器を導入した。

 スクラムマシンだ。リモコン操作で組み手に左右から強弱の圧をかける。日本代表は、8人ひと組のつながりを保ちたい。体格の大きな強豪国を相手に自分たちの型を出すにあたり、特殊な機器でシミュレーションを重ねる。

 ワールドカップ・フランス大会を今秋に控え、6月開始の浦安合宿からこのツールを採用する。

「(マシンが)押し返してくれる。PRもきついけど、たぶん、後ろの方がきつくて。意識しないと下がっちゃうから。後ろの意識をつけるには、いいなと思います」

 こう話すのは具智元。身長183センチ、体重117キロの28歳で、最前列の右PRとして21キャップを持つ。元韓国代表の左PRである東春氏を父に持つことでも知られる。

 スクラムでは、LO、FL、NO8といった「後ろ」の選手の動きも肝となる。ポジションの特性上、次のプレーへと意識が傾きがちになる5人が、PR、HOといった最前列の3名に正しく力を伝えられるか。また、そのための姿勢を作れるか。

 新しいスクラムマシンがかける圧は、特に「後ろ」のメンバーの意識を問うのではと具は見立てる。

 もちろん自分とも向き合う。

 昨年11月12日、次回のワールドカップでぶつかるイングランド代表と対戦。ロンドン・トゥイッケナムスタジアムでの一戦では、前半9分のファーストスクラムでコラプシング(塊を故意に崩す反則)を取られる。相手との距離感に違和感を抱いたまま組んだのが災いした。

 さらに15分、20分にも同じ反則を取られ、試合の主導権を握られた。13-52で敗れた。

 この日は、首の故障から復帰後初めてとなる海外での試合だった。具は反省する。

「首のけがから(戻って)久しぶりの海外の試合で…。『距離が遠い』と不安なまま組んじゃって…。最初にちょっとやられて、そのまま3本、パニックになって。メンタルの面で反省しています。1本、やられ、真っ白になっちゃった」

 間合いを取って組みたがる相手に適応しようとするあまり、「待ったら負け」を合言葉にまとまって差し込む日本代表のスタイルを表現できなかったのだ。ハーフタイム、指導する長谷川慎アシスタントコーチにも厳しく言われた。

「いままで通りに組め」

 幸運だったのは、助言通りに原点に立ち返れば手応えをつかめたことだ。

 後半15分頃、具は膝を深く曲げ、背中を真っすぐに保って耐える。やがて相手のパックが乱れ、今度はイングランド代表のコラプシングが判定された。

 向こうがちょうど主戦級の左PRであるエリス・ゲンジを途中で退けていたのも確かだが、日本代表が成功体験を積めたのも事実である。具は言った。

「後半、普通に組んだら、逆に反則も取れた」

 自分たちの組み方を信じる。国内リーグワンがおこなわれていた3月下旬には、浦安で日本代表のミーティング合宿があった。ここではスクラムの練習もあった。

 ちょうどけがをしていた具は見学しただけだったが、「復帰前に『(日本代表のスクラムをするうえで)こことここは大事にしよう』と確認できました」と効果的な復習ができたという。

 再構築したのはスクラムだけではない。5月までのリーグワンシーズン、その直後にあった一部の代表選手によるフィットネスキャンプを終えると、中学生以来となる韓国への長期帰国を実現した。

「心は休みながら、身体は鍛えていました」

 現地で練習用のグラウンドを見つけるまでは、仁川空港近くの白雲山という山でサーキットトレーニング。心拍数をあげた。

「お父さんは、下(山のふもと)で待ってました」

 その後はウェイトトレーニングをおこない、走って当たれる身体を作り直す日々だ。浦安入りして約1週間が経った時点で、具は表情を緩めた。

「いままでのなかではベストな感じです。フィットネス(持久力)は上がっていて、(一時期故障していた)首ももうちょっとで(状態が)戻ってくるかなという感じです」

 心身の充実が本番での好スクラムを生むか。

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